日本は兵器開発の最前線にいなければダメ~戦争漫画家が語る国防論

“戦える”のに“戦わない”が理想だが…
かわぐち かいじ, 三田 紀房

山本五十六のリーダー像

かわぐち: 私は『ジパング』で山本五十六を好奇心の強い人間として描きました。三田さんも『アルキメデスの大戦』で五十六を描いていますね。

三田: 超巨大戦艦建造計画を潰すために、全くの部外者である櫂直を、いきなり少佐に任命したり、海軍航空本部技術部長として新型戦闘機を開発を主導し、次は航空機の時代であると海軍を啓蒙せんとしたりする物語のキーマンです。

かわぐち: 五十六って航空機開発や真珠湾攻撃など、大鉈を振るうリーダーって感じだよね。

三田: 確かに仰る通りですね。大きな戦略目標を自ら立案し、信頼するスタッフに詳細を詰めさせて計画を実行する。勝っても驕らず、ミッドウェー海戦の様な負け戦の時は、部下を責めずに粛々と全責任を取る。

かわぐち: ある意味、理想のリーダー像かも。日本海海戦の英雄、東郷平八郎も同じ様に描かれる場合が多い。「ああ、こんな人の下で存分に腕を振るいたい」って思わせるリーダーとして。

 

三田: でも、私はどちらと言うと決して完全無欠の英雄ではない、もっと人間くさい感じに描いていきたいんです。

五十六は良い意味でも悪い意味でも人情家で、結構、流されやすい性格であったとの記述も残ります。博打屋でもあり「水をガソリンに変える」なんて、見え見えの詐欺に引っ掛かったりしています(笑)。私にはそんな人物像の方が、より魅力的と思えました。

かわぐち: 確かにそうだね。この世に完璧な人物なんて存在しない。人間は欠点がある方が面白いのは当たり前。

私は旧海軍軍人の中で、山口多聞中将が好きなんですが、彼だけでなく『アルキメデスの大戦』にはこれからも多数の軍人・著名人が登場する事と思います。素材が良ければ良い程、料理人の腕が試される。三田先生が、彼らをどう料理するのか、楽しみに待っています。

三田: ありがとうございます。ご期待に応えられる様、これからも頑張ります。

かわぐちかいじ
1948年、広島県尾道市生まれ。’68年「ヤングコミック」誌にて『夜が明けたら』でデビュー。『はっぽうやぶれ』『プロ』『ハード&ルーズ』などヒット作多数。’87年『アクター』、’90年『沈黙の艦隊』、2002年『ジパング』で講談社漫画賞、2005年『太陽の黙示録』で小学館漫画賞を受賞。現在はモーニングで『ジパング 深蒼海流』、ビックコミックで『空母いぶき』を連載中。
三田紀房(みた・のりふさ)
1958年生まれ、岩手県北上市出身。明治大学政治経済学部卒業。代表作に『ドラゴン桜』『エンゼルバンク』『クロカン』『砂の栄冠』など。『ドラゴン桜』で2005年第29回講談社漫画賞、平成17年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。現在、「モーニング」「Dモーニング」にて〝投資〟をテーマにした『インベスターZ』を、「ヤングマガジン」にて『アルキメデスの大戦』を連載中。