東芝「潰すか救うか」メガバンクのトップが本音を明かした

【大人の事情】内幕ドキュメント
週刊現代 プロフィール

前出・関係者が続ける。

「その一つが、産業革新機構が半導体子会社ではなく、東芝本体にも出資をするシナリオ。

そもそも産業革新機構の理念は、『革新性を有する事業に対して成長資金を提供する』というもの。その点、東芝本体が手掛ける廃炉技術はまさに全世界で求められる新しい革命的技術なので、革新機構からすれば出資の理由を説明しやすい。

政府系が出資をすると、『税金』を出した以上、東芝の経営に口を出しやすくなるのもメリット。特にアメリカでの原発事業については、対処を誤れば外交問題にも発展しかねないため、むしろ政府が前面に出て交渉したほうがスムーズに事が運びやすい。

おまけに国が前面に出ると地銀などの融資行にも安心感が広がるので、資金繰りにも余裕が出てくる」

実は官邸からしても、これは妙案。東芝には日本全国に1万を超える取引先があり、その多くは年商10億円にも満たない会社なので、仮に東芝が破綻すれば次は「全国1万件の連鎖倒産」すら起きかねない。

東芝社員19万人のみならず、そうした取引先、関係先に勤める従業員とその家族を路頭に迷わせれば、「なぜ政府は日本航空を助けたのに、われわれは助けてくれなかったのか」と批判の矛先が向けられる。

「しかも、東芝が多くの工場や事業所を抱える神奈川県横浜市近辺は、菅義偉官房長官のお膝元。東芝の半導体の巨大工場がある三重県四日市市も、民進党の岡田克也元代表の地元なので、与野党ともに東芝支援に反対しづらい」(経産官僚)

 

小山田頭取が本誌に明かす

つまり、現在は銀行管理下にある東芝が、国家管理へと移行していく可能性も出てくる。メインバンク幹部も言う。

「国家主導での東芝救済案についても、そのシナリオが語られ出している。

具体的には、いったん東芝を上場廃止させる。その上で、東芝を新旧2つの会社に分社化させて、新社には軍事、原発などの国策部門を集めて、残りは旧社に集める。そして、新社には政投銀や三井住友、みずほなどの主力行、生保などの機関投資家がファンドを組んで投資する。

新社のバックには国がつくから、再上場すれば株価は急騰必至。旧社は清算処理して、そこで融資行が損失を負う可能性もあるが、新社の再上場による株式の値上がり益でそれも穴埋めできる。さらに、新社の株式の半分以上は東芝が持ち、新社の再上場で東芝が利益を上げる形にする」

もちろん、いずれの金融支援策も、銀行団の足並みが乱れてしまえば台無しになる。その点、みずほフィナンシャルグループの佐藤康博社長はこの2月、本誌に次のように語っている。

「東芝は日本にとって大切な会社。メインバンクのひとつとして東芝を支えていく。これに尽きます。これは三井住友銀行さんもまったく同じです」

4月から三井住友信託銀行の新社長に就く橋本勝副社長も、「先方から相談があれば真摯に対応していきたい」と公然と語り、主力3行はすでに一体。今後のキーは前述したように三菱東京UFJ銀行の動向だが、同行の小山田頭取は本誌の取材に次のように語る。

「東芝さんはインフラ、デバイスなど、広く日本の産業を支える役割を果たされている。今回の危機を乗り越えて頂き、立ち直って欲しいと思いますし、われわれとしてもそれに向けてしっかり対応していきたいと考えている。

(グループ証券会社の空売りについては)その動きをつぶさに認識しているわけではないが、ひとつの意思があってのものではない。あくまで銀行団としてまとまっていく形で、東芝さんには立ち直ってもらいたいという思いがありますし、それだけの力を東芝さんはお持ちだと思います」

つまり、混迷を続ける東芝経営陣に代わって、銀行や国が前面に出てこの会社を復活させていく「再生シナリオ」が、ここから始まる。

こうした銀行団の動きに気付いた一部の市場関係者の間ではさっそく、現在暴落している東芝の社債を買い漁る動きも出てきているという――。

「週刊現代」2017年4月8日号より