東芝「潰すか救うか」メガバンクのトップが本音を明かした

【大人の事情】内幕ドキュメント
週刊現代 プロフィール

見てきたように、銀行は東芝経営陣に対して怒りが煮えたぎり、切り捨てたいと思っているにもかかわらず「救う」とは本末転倒だが、その背景にはまた別の深刻な事情がある。

主力行幹部が言う。

記者会見する東芝の綱川智社長〔PHOTO〕GettyImages

「われわれが東芝を簡単に切り捨てられないのは、東芝が抱えているインフラ事業の問題が大きくかかわっているからです。

東芝のインフラ事業はエレベーター、鉄道、道路標識など多岐にわたり、日本全国に納入されている。仮に銀行が支援をストップして東芝が破綻すれば、そうしたインフラの整備や改修などが滞るリスクが急浮上しかねないのです。

メディアではこの点についてまったく報じられませんが、その理由は想像すればわかります。全国のオフィスビルやタワーマンションでエレベーターが止まり、メンテナンスが行われなくなった鉄道区間が運休を余儀なくされ、道路標識の誤表示で交通事故が多発する……東芝が破綻すれば、そんな悪夢が起きてもおかしくないわけです」

当然、そんなことになれば日本全国がパニック状態に陥り、日本経済そのものが根っこから揺らいでしまう。そのトリガーを銀行が引いたとなれば、全国民の怒りが東芝ではなく、銀行に向くのは目に見えている。

「それだけではありません。これもメディアは表立って報じませんが、東芝は軍事企業です。防衛省に対してミサイルやレーダーなどを納入して数百億円規模の契約を国と結んでいるし、米軍などのハイテク兵器にも東芝製品が使用されてきた。

おまけに原子力事業を抱え、いまや東京電力福島第一原発の廃炉作業は東芝なくしては行えない。そんな『国策企業』の生死を金融機関の一存で決定すれば、安全保障問題に影響を与えかねない」(前出・幹部)

実は三井住友銀行の國部頭取も、前述の会見で東芝批判を繰り広げた後、それでも最後には「メインバンクとして可能な限りサポートしていく」と語っている。

東芝経営陣に言いたいことは言わせてもらうが、「大人の事情」を考えるとこんな腐った会社であっても救わざるを得ない――國部頭取の一連の発言は、そうした取引行としての苦悩と決意の表明だったわけだ。

全国1万件の連鎖倒産

そして、三井住友銀行、みずほ銀行、三井住友信託銀行という主力3行の東芝担当者たちはいま、頻繁に会合を重ね、東芝をいかに救済していくかを議論し始めた。

内情に詳しい関係者が明かす。

 

「3行の担当者と東芝側の担当者は、毎日のように打ち合わせをしています。時に東芝本社に集まり、時に弁護士なども同席させたうえで、具体的かつ、法律的な見地からも問題がないような救済策を模索している。

しかも、営業部の担当者レベルだけではなく、すでに営業担当役員、審査担当役員同士も顔を突き合わせて、フル稼働している」

債務超過をいかに解消して、会社を存続させるかを東芝と一緒になって考えているのが実情。ここへきて新聞やテレビは、産業革新機構や日本政策投資銀行が東芝の半導体子会社に出資すると報じ出したが、現場レベルではさらなる「ウルトラC」の救済策も検討され出している。