王子さまはもう必要ない!
そのあとエルサは、アナの真実の愛を目の当たりにして、またオラフの言葉によって、自然存在のあらゆる力について、瞬時に悟ったわけである。
頓悟である。
〝偉大なる力〟は訓練によって徐々に得られるものではなく、一瞬にして得られるものである、ということを示したシーンでもあります。すばらしい。
変わるとき、人は一瞬にして変わる。徐々に変わっているなあと自分で感じてるときは、実は何も変わっていない。教訓としておきましょう。
アナは自らの真実の愛の力によって、みずからを救った。
エルサは瞬時にしてすべてを悟った。頓悟した。
これはふつうの人間の愛と、能力者の頓悟の物語なのだ。この二重構造が、とても魅力的だったのだ。
ディズニー・アニメはこの映画ではロマンスを手放しています。
ハンス王子や、氷売りのクリストフとの恋も描かれているけれど、それは見てる人をわざとミスリードするための(驚かせるための)サイドストーリーでしかない。物語の本質とは関係がない。
この映画は、プリンセスにとっても王子は必要でなくなった、ということを示していた。まさに〝王子殺し〟の映画である。
ディズニーのプリンセスは、いつも「幸せになりたい」と考えている。かつては王子さまと一緒になるのが幸せの象徴であったが、いまはもう、王子さまも要らない、と示された。この大ヒット映画が宣言した。
その3年後の『モアナと伝説の海』には、もはやロマンスのかけらも示されていない。
恋愛で女性が主導を握って引っ張っていった世界のなりゆきが、こういうことなのだろう。
ディズニー・アニメ映画を観ているかぎり、世界は少しづつではあるが、よくなっているようにおもえる。動物種として幸せになっているかは疑問であるが、それは別に気にしなくていいのだろう。