ディズニー映画から「王子さま」が消えた…変わりゆく女子の幸せ

「アナ雪」の本当のメッセージ
堀井 憲一郎 プロフィール

何が凍りついたアナを溶かしたか

姉の魔法の力で氷結してしまったアナは、なぜ、生き返ったのか。

ふつうは姉がアナが氷りついたのを見て、哀しみ、泣いたために解けた、というふうに捉えるだろう。しかし、私はそれは違うとおもう。

それでは展開上、奇妙である。エルサは、まだ自分の力が制御できないまま、妹を失い泣き崩れているだけなのだから。

童話のパターンとして、死んだ相手にとりすがって涙を流すと死者が生き返るというシーンはいくつもありますが(「美女と野獣」がそうですし「塔の上のラプンツェル」もそうです)、表面上はそのパターンと同じながら、その実体は違ってるとおもう。

エルサが、魔法の力を制御できるようになるのは、アナが生き返ってからだ。

だから、その直前、凍りついたアナに抱きついたときは、まだ魔法の制御ができてなかった。だから、氷を溶かしたのは、エルサの力ではない。

愛の力によって溶けた。

この時点では、まだダークサイドにいる姉は(自然の力に負けたままの状態のエルサは)、妹のことまで考えている余裕がなかった。

現に、ハンスに斬られようとしてるが避けていないし、アナが身を挺して守ろうとした瞬間も彼女に気づいていない。凍りついてしまった妹を見て、抱きついて泣いているだけである。

抱きついているときのエルサは、ただ、後悔している。

愛する者を失ったとき、しかもその原因が自分にあるなら、死者にすがったときにまず出て来る言葉は、愛してるではなく、ごめん、悪かった、そういう言葉のはずです。愛の言葉ではない。だから溶かせない。

愛があったのは、妹のほうである。

 

自分の身を挺してまで姉エルサを守ったアナ。

彼女は、姉の魔力によって永遠に凍らされようとしているのに、それでも姉を心配し、斬られる姉を守った。氷になったから斬られなくて済んだけど、でも止めに入ったときは斬られるつもりで飛び込んでいた。大切な人だから、一身をなげうって守った。

アナには真実の愛の心があった。

となると。

凍りついたアナを溶かしたのは、アナ本人の力、アナの心に強く蘇った姉をおもう愛の力によるものだ、ということになる。

アナは、姉エルサを守ろうとした真実の愛の力によって、つまり自分で動いたことによって、凍りついた自分を溶かすことができた。氷結する直前に、我が身を投げ打って姉を守ろうとした愛の力によって、氷結した直後から氷結直前の行動によって溶け始めた、ということになる。ちょっと妙な話ですけどね。でも、そう考えないと辻褄が合わない。

エルサはアナを救っていない。

アナはエルサを救おうとして、エルサを救い、自分も救った。

だって、彼女は主人公だから。

メッセージ性を読み取るなら「キスを待つという、受け入れられる愛では自分は救えなかった。自分から愛している人に飛び込んだら、自分も救うことができた」ということになる。