ディズニー映画から「王子さま」が消えた…変わりゆく女子の幸せ

「アナ雪」の本当のメッセージ
堀井 憲一郎 プロフィール

ありのままに生きてはダメです。

サブの主人公である雪の女王エルサにとっては「修行と覚醒」の物語である。

エルサももう一人のヒロインではあるが、まったくロマンスと関係しない。一国の女王となるが、結婚相手はなく、しかも結婚する話もまったく出てこない。

さすが歴史上、一度も王を戴いたことのないアメリカ制作らしい雑さで、王国にとって次の王は誰を予定しているのかというのはとても大事な問題のはずだけど、そのあたりはスルーされている。まあ、誰も気にしてないようだから、それはそれでいいでしょう。

エルサは、自分の内面ばかりを気にして生きている。

能力者であるのに、恐れを抱いたために、ダークサイドに落ちる。このあたりは、スターウオーズのジェダイと似ている。

自分で自分の恐れを制御できないと、悪の力に負けて引き入れられ、悪の手先となってしまうのだ。エルサはダースヴェイダーと同じ道を歩んでいる(ありのままに生きていると、ダークサイドに落ちる、ということを示唆している)。

女王になった日に、力は制御されなくなり、解放されてしまう。そのとき「れりごー」と歌い、人間世界と決別する。しかし、人間世界は彼女の力で氷に閉ざされ、それを放置している。魔法の力を野放しにした姉エルサは、人間の敵と認定されてしまう。

その能力者を妹アナが助ける。アナが、彼女を覚醒させる。

もう一度言っておきますが「れりごー」は拒絶と破壊の歌です。

ありのままに生きると、本人はいいけど、まわりが死にそうになるぞ、ということを示している歌です。そこんところ、覚えておいてください。

ありのままに生きてはダメです

それがこの映画の大きなメッセージです。

 

エルサの覚醒

妹アナは、能力者エルサをどうやって覚醒させたのか。

妹アナは、逃げた姉エルサを訪ねて説得するが、拒否される。そのおり、誤って氷の力で胸を射貫かれてしまう。魔法の誤射です。ほとんど流れ弾に当たったという感じだけれど、それで、彼女は氷り始める。

森の妖精に「この凍った心を溶かせるのは真実の愛だけだ」と言われる。このままでは凍え死ぬため、真実の愛の相手だと信じていた王子ハンスにキスしてと頼むが、見捨てられる。悪の王子ハンスの真の姿が露わになる。

悪の王子ハンスは、雪の女王エルサを捕らえ、人類の敵として死刑を宣告する。なにげなく見ていますが、このあたり、かなり暴力的な展開をしています。

ハンスは、エルサを自らの剣で斬り殺そうとする。

その剣が振り下ろされた瞬間、凍え死にかけていたアナがその剣の下に駈け込み、阻止する。剣で斬られる刹那、アナの全身が氷結する。氷の塊となったアナは、振り下ろされた剣を粉々に砕き、エルサを守る。氷結した風圧で悪漢王子ハンスは吹き飛ばされる。

エルサは氷となり動かなくなってしまったアナの顔を両手で包み「アナ! アナ! そんな! いや!」と彼女を抱きかかえて泣き崩れる。

すると。あら不思議。

アナの胸の部分から、氷が溶け始める。またたく間にアナは生き返り、二人は抱き合う。

「私を助けるために、なんてことをするの」
「大切な人だから」

という姉妹の会話を聞き、オラフ(洋風の雪だるま)が「ああっ、真実の愛が凍りついた心を溶かしたんだよ」と叫ぶ。それを受けてエルサは「愛は氷を溶かす………」と呟きつつ、その瞬間にすべて悟る。

「愛、そうよ、愛よ!」とエルサは叫び、その瞬間に、魔法の力の制御のしかたを会得した。ジェダイとして覚醒し、氷を溶かし、アレンデールに夏を戻した。ジェダイじゃないけどね。でもこれでエルサはフォースを自由に操れるはずである。