正気ですか?「パン屋は愛国心が足りない」という道徳教育の愚

政治と道徳の笑えない関係
辻田 真佐憲 プロフィール

道徳と教育のこれから

道徳の教科化は、こうした一連の教育改革の集大成であり、安倍政権にとっても誇るべき成果でもある。したがって、安倍政権下の文部科学省が片言隻句にこだわって徹底的に道徳教科書を検定し、教科書会社がそれを慮るのもやむをえない。

そのなかで「パン屋背徳事件」のごときものが出てきても、とりたてて驚くに足りない。むしろこれくらいで済んでよかったとすらいいうる。

ただ、これ以上の問題発生を防ぐためには、われわれが無関心を捨てて、政治家や文部科学省に道徳教育への介入を断念させるか、あるいはみずから積極的に関与して道徳教育をよりよい方向に導くしかない。

今回の「パン屋背徳事件」は、道徳教育に対する国民の関心を高めたという点で怪我の功名だった。

今後グローバリズムやナショナリズムに対応するためさらなる教育改革が進められるだろうが、そこではできるだけ合理的で、柔軟な議論が求められる。

そうしなければ、第二、第三の「パン屋背徳事件」がより深刻なかたちでわれわれの目の前に現れるだろう。そして今度こそは、われわれもこれを笑って済ませられなくなるかもしれない。

(バックナンバーはこちら http://gendai.ismedia.jp/list/author/masanoritsujita
文部省の研究