南スーダン自衛隊撤退ではっきりした日本の安保の「超重大な欠陥」

国際社会にバレたら一大事!?
伊勢崎 賢治 プロフィール

もういい加減に現実を見よ

しかし、たぶん今回は国連側から遺憾声明などあまり騒ぎ立てることはしないでしょう。

安保理による4000名の増兵の決定後、兵力を提供する国があるのかと一時は心配されたのですが形を整えつつありますし、去年の戦闘で住民を十分守りきれなかったという国際世論の激しい非難を受けて、PKO部隊全体として士気が高まりつつあるので(それを察してか悪さをする奴らも様子見で現場が小康状態になっている)、それを損なわないために、自衛隊撤退をあえて騒ぎ立てず、シラーっと流すハズです。

何より、いくらなんでも今回は、「仮想空間」が南スーダンのどこにも、一番安全なハズの首都ジュバのどこにも存在しないことを、日本政府は今まで自衛隊を「お客様」として扱ってくれていた国連に説明したハズです。

もはや「仮想空間」がない状況で自衛隊を抱え続けることは、大変大きなリスクになりますから、その理由でもシラーと流すハズです。

もし、自衛隊を巻き込む軍事的過失が起きてしまったら? 繰り返しますが、南スーダン政府に対して地位協定上の責任を負っているのは国連です。

1999年国連事務総長告知で、国連地位協定によって南スーダンのような相手国から犯罪時の裁判権を奪う代わりに、その処理を各派兵国の国内法廷に課しているのに、日本にはそれがない。

ただでさえ、好戦的になっている国連PKOに、偏狭な主権意識を刺激されている南スーダン政府です。国連PKOは進駐軍のような感じで、南スーダン政府との関係は最悪なのです。

もし、そんな中、自衛隊がらみの事故が起きてしまったら、南スーダン政府は、怒り心頭「軍事犯罪の落とし前もつけられない、いい加減な国の軍隊を我が国に入れたのか!」と、国連を糾弾する材料に利用するに決まっているからです。

南スーダン撤退表明後、自衛隊関係者からは、もう部隊としてのPKO派遣はしない。もしくは、住民の保護などの好戦性のないPKO、例えばキプロスの停戦監視ミッションを次の派遣候補に挙げる声が聞こえてきます。

思い返してください。南スーダンに自衛隊を送った民主党政権当時、南スーダンはまだ建国したばかりで、同PKOの主要任務は住民の保護ではなく「国づくり支援」でした。

南スーダン政権は、分離独立したスーダン内戦から成りあがってきた軍閥の集合体のようなもので、いずれは内輪もめが始まり、それが新たな内戦に発展することを国連はしっかり予想していたのです。だから、国づくり支援に見せかけて、こういう危ない連中のお目付役としてPKO部隊を投入したのです。

案の定、すぐに大統領派と副大統領派の確執が内戦化し、それによって犠牲になりだした住民の保護が主要任務になっていきました。

今は、自衛隊にフィットする「仮想空間」があるように見えるキプロス停戦監視PKOでも、いつ事態が悪化して主要任務が切り替わるかわかりません。

その事態が住民が犠牲になるものになったら、PKOの主要任務は住民の保護に切り替わり、その時はもはや、南スーダンと同様に、簡単に撤退できなくなるのです。

もういいかげんに、9条に抵触させないためだけの「仮想空間」探しは、止めにしませんか?

日本が抱える根本問題

今回、南スーダンで「仮想空間」が崩壊することによって、期せずして明らかになった自衛隊の法的な地位の根元的な問題は、単にPKOに部隊派遣を止めればいいという問題ではありません。

 

その根元的な問題とは、自衛隊が国際人道法違反を犯した時にそれを法治国家として適正に対処する法体系が日本にはないことなのです。

それを普通の国では、軍事法典、軍事裁判所といいますが、日本にはこれがありません。(最近、僕の教え子が、大変意欲的な学術論文を書きましたので、ぜひご参照ください。「日本の軍法の可能性」三浦有機 http://kenpou-jieitai.jp/kenkyuuronbun_miura_yuuki.html )

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