トランプ節は「プロレス」から生まれた!シンプルかつ快感の世界

だからこんなに愛されている
川崎 大助 プロフィール

プロレス界との深い関係

ところで実際、トランプとプロレス界の関係は深い。WWEとは昵懇の間柄だ。

関係が始まったのは1988年、ニュージャージー州アトランティック・シティにて、自らが所有するトランプ・プラザ・アンド・カジノがホストを務める形で、WWEの興行がおこなわれたのが最初だ。

ここからずっと良好な関係は続き、なんと2007年にはトランプ本人までもが試合に参加してしまう。

「億万長者対決(Battle of the Billionaires Hair vs Hair)」と題された試合がそれで、同団体の興行「レッスルマニア23」のなかで展開された。

このときトランプは、WWEのオーナーであるヴィンス・マクマホンと対決。双方が代理としてレスラーを立て、負けた側が頭を丸坊主にする(双方ともにカツラ疑惑があったので)という設定で、話題となった。試合はトランプが勝利、マクマホンが頭髪を剃り上げた。

〔PHOTO〕gettyimages

面白いのは、このときの両者のリング上のやりとりだ。

当時は、トランプよりもマクマホンの喋りのほうが「勢いが上」だったことが映像からも確認できる。すでに「トランプ節」は生まれていたのだが、「WWEのリングの上」では、場数を踏んだマクマホンにトランプは敵わなかった。

が、今日のトランプはマクマホンよりもずっと上だ。つまり「トランプ節は進化している!」のだ。

 

前述したとおり、トランプ節は地ではない。たとえば、80年代前半あたりの、若き日のトランプの話しかたを映像で見てみると、怪人めいた今日の毒々しさはほとんどない。くぐもったような口調など、もちろん類似点もあるのだが、当時のトランプの喋りかたは「普通の人」の常識的なものでしかない。

僕はこの一連の「プロレス経験」が、マクマホンや、それ以外の綺羅星のごときスターたちのマイクアピール術を間近に体験し続けたことが、「トランプを変えた」と考えている。

彼のパフォーマンス術を形作ってくれたのは、プロレスなのだ。トランプは、マット界およびWWEには大恩があるのだ。

(ゆえに、ヴィンスの妻でありWWEスターでもあるリンダ・マクマホンがトランプから中小企業庁長官に任命されたことには、なんの不思議もない)

トランプによって中小企業庁長官に任命されたリンダ・マクマホン氏〔PHOTO〕gettyimages