3月23日の午前と午後に開かれた衆参院予算委員会の2日前のことだ。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のレオ・ルイス東京特派員が記事中に「Brexit」(英国のEU離脱)を捩じった「Abexit」(アベグジット)という造語を使ったことから、海外の機関投資家の間で「安倍晋三首相は退陣するのではないか」との不安が高まり、一部で日本株売りに走ったところもあったという。
同記事には証人喚問された森友学園の籠池泰典理事長名の記述はなかったものの、安倍首相が民族主義的な幼稚園に国有地を安く払い下げた疑惑に巻き込まれ、そして否定しているが、新設小学校への寄付を行ったと取り沙汰されている、とある。
さらに記事は、今週中に開催される国会の証人喚問に件の幼稚園責任者が出席する、と続く。
いずれにしても、記事冒頭に「a potentially toxic cloud of scandal wafted towards Japan’s prime minister」(有毒の恐れがあるスキャンダルが日本の首相に向かって漂い)という表現があったため、不安を覚えた海外の大物投資家が安倍首相の去就について在京の株式ブローカーを質問攻めにしたというのだ。
さすがにFT、影響は大きい。筆者のもとにも在京の外資系金融機関から証人喚問の見通しを尋ねる問い合わせが多くあった。
では、肝心の籠池理事長の証人喚問である。
テレビで国会中継を観た国民の反応は、同氏の時には笑みを浮かべるなど自信たっぷりに証言する様子から「真実」を述べたのではないかというものと、疑惑の核心に触れる質問に対しては「刑事訴追の恐れがあるのでお答えできません」を連発したことでやはり「稀代のサギ師で嘘つきではないか」というものとに分かれた。
「森友学園疑惑」(=「籠池劇場」)が今回の証人喚問によって幕引きになったとは言えないが、それでも、証人喚問を終えて始まる国策捜査のトリガー(引き金)となったことだけは確かである。