日本国民のための「PKO入門」〜平和とは何か、国際協調とは何か

「PKO法」の25年間と今後の課題
篠田 英朗 プロフィール

PKO法の未来

自衛隊の南スーダンからの撤収は、PKO法の運用に少なからぬ影響を与えるだろう。

いわゆる「駆けつけ警護」の実施が果たされたが、その意義は怪しい。本来は任務遂行命令が下された際に起こり得る事態について、違法性を阻却するための法的整備にすぎない規定が、「戦争をするPKOで自衛隊に戦争をさせる」ための規定だと宣伝され、国内政争に利用された(参考「国際平和協力法『第三条第五号ラ』は違法性の欠如を明確化する措置にすぎない」)。

国民の多くは「駆けつけ警護は危険な戦争行為」といったふうに誤解しているだろう。次回のPKO派遣にも暗い影を落とす結果になったと言わざるを得ない。

アフリカのPKOは困難なのでやりたくない、という国内世論の風潮は、次のPKOへの部隊派遣がいつできるか全くわからないことを意味する。これによって改憲論が盛り上がるといった風潮があるようにも思えない。単にPKO法の運用が滞るという結果だけが生まれたのではないか。

 

自衛隊には国内災害対策や、東アジア対応への準備を優先させるべきだという論者もいる。

しかし国際的な支援を日本が受け入れる場面はもちろん、朝鮮半島情勢に本格的な対応が迫られる場合、実際の作戦任務の内容もすべて、外交的な配慮で決せられる、ということも、忘れてはならない。

すでに北朝鮮問題は、繰り返し安全保障理事会で討議されている。安保理では、国連PKOに多大な貢献をし、巨額の開発援助も行っているアジアの超大国・中国が拒否権を持ち、AUの大国エチオピア、ECOWAS主要構成国のセネガル、スーダン情勢に大きな関心を持つエジプトなどのアフリカ諸国が、非常任理事国として加わっている。

「日本はアフリカの問題に関わる余裕を持たず、ただ自国の周辺のことだけに専心したい国だ」といった態度を、常日頃からこれらの国々に見せつけておくことが、緊急対応の場合に役に立つとは、到底思えない。

アフリカのPKOに自衛隊を派遣するのは、東アジア情勢対応の足かせだ、という考え方は、近視眼的だと言わざるを得ない。

だがすでに自衛隊撤収の決定はなされた。近い将来に日本がPKOにあらためて大規模に関与する見込みもない。

日本の国力は、経済規模で言えば、中国の3分の1程度にまで落ち込んだ。トランプ政権下のアメリカは、多国間外交を駆使してアジア外交を見渡すことに大きな関心を持っていようには見えない。

日本には、これまで以上にいっそう繊細な配慮を積み重ねて、外交的環境を整えていくための不断の努力が求められている。地味であっても忌避することなく、PKO法運用の可能性も、引き続き検討していくべきだろう。

(バックナンバーはこちら http://gendai.ismedia.jp/list/author/hideakishinoda