地球は「水の惑星」と呼ぶにふさわしい天体だ。
しかし、地球の水の「起源・分布・循環」という3つの謎は、大きな未解決問題として残されている。本書は、水がこの惑星にどんな影響を与えてきたかの謎に、地球誕生からプレートテクトニクスまで、さまざまな角度で迫る。まずは前書きを全文公開!
地球はよく「水の惑星」と呼ばれます。それは地表の大部分が海でおおわれているからですが、海水の量は質量にして、地球全体の約0.023%にすぎません。
しかし、少量ですが、この水が地球をユニークな惑星にしているらしいと考えられています。例えば、今のところ生命が発生したことが確認されている惑星は地球だけです。
また、堅い岩盤(プレート)が海嶺(かいれい)で生成され、海溝で地球深部に戻っていくというプレートテクトニクスという様式の地質活動が長いあいだ起きている惑星も地球だけです。
このどちらも水のおかげである可能性が高いのです。
そこで、多くの科学者は、地球の水はどこからきたのか、地球には海水の他にどれだけの水があるのか、地球内部に水があるとすればどのように循環しているのか、という問題に挑んできました。
水に関する問題が解明されれば、なぜ地球が他の惑星と違っているのかを理解できるようになる、と期待できるからです。
地球の水についての研究では、地表に海水がいかに安定に存在するかが問題にされることが多いのですが、地球内部の水も無視できません。地球内部は質量にして海水の5000倍近くもあります。
したがって、もし地球深部の物質がある程度の水を保持できるなら、地球内部は巨大な水の貯蔵庫となりえます。
実際、ここ20年くらいの研究で、地球深部の物質は多量の水を蓄えうることが明らかになりました。そして、実際の地球内部の水の分布も推定されるようになったのです。
その結果、地球内部には海水よりずっと多量の水があることがわかってきました。また、水が地球内部でどのように循環しているのかも、かなりの程度わかりつつあります。
どうやら地表にある海水も、地球深部における水の循環と密接な関係をもっているようです。