お茶屋遊びはいくらかかる?知らないと痛い目に遭う「京都のお値段」

あの土地の秘密も、教えます。
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おもてなしのおねだん

つかず離れずのおもてなしが京都人の真骨頂。大野氏が心に残った「おねだん」はまだまだある。

「京都のおねだんを知るためには、モノそのものだけではなく、おもてなしについても理解する必要があります。

例えば、京都に『老舗』『高級』と呼ばれるものは数多くありますが、チャップリンや三島由紀夫、川端康成の愛した旅館『柊家』には心、人の気持ちのおねだんを感じます。

柊家は一泊3万4000円~9万円。最高の部屋、調度、料理に加えて、余計な華美さはなく、心から落ち着ける質実な品格があります。京都老舗ブランドを前面に押し出すことも、やれ布団はどこそこの一流品で、などと恩着せがましくいうこともありません」

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「私の著書『チャップリンの影~日本人秘書・高野虎市~』を読んだハリウッドで活躍する日系四世の俳優クライド・クサツ氏が来日し、私のインタビューにいらっしゃった。

チャップリンの導きと思い、柊家に取材場所をお願いすると、ご快諾下さった。仲居さんは『今日はチャップリンさんが来られたときと同じしつらえで花を生けさせてもろてます』と。急なお願いにもかかわらず、最高の演出をしてくださる奥ゆかしさに感動しました。

おもてなしは、単なる『サービス』ではなく、もてなす側ともてなされる側の、心と心の通じ合いなのでしょう。

その一方で、先日、こんなミステリーのような話を聞きました。さる著名な漫画家先生が、有名料亭で食事をしたところ、カニ鍋がとても美味だったので思わずおかわりしてしまった。

東京に戻り、2ヵ月ほどして届いた請求書には30万円と書かれていたという。その請求書をほったらかしておいたところ、そのままで済んでしまったらしい。『あの人、払わはらへんかったわ。ほほ』と笑われて終わってしまったのか、一見さんお断りの店なら先生に店を紹介した人が黙って全額支払って尻拭いをしたのか。

この話には多少の誇張があったかもしれませんが、30万円がカニ代だけだったとは考えにくい。『おかわり』がいけなかったのか? しかし、名前の通った老舗がぼったくりをするとも考えにくい。結局、店側の真意が先生には最後まで理解できなかった。30万円は何のおねだんだったのか。それがわからないのが京都なのでしょう」

 

京都ではおねだんを優しくまけてくれることもあれば、逆に高いおねだんをふっかけることもある。決して「お客様は神様」ではない。高いおねだんを出して、自分のおねだんを勉強させてもらうこともある。それが京都の「奥深さ」と言えるのかもしれない。

「週刊現代」2017年3月25日・4月1日合併号より