ユーミンと大物右翼「頭山家」の知られざる血脈と交流

ポップカルチャー界の「華麗なる一族」
週刊現代 プロフィール

倉本の言葉に触発され玉子は、縁の人々に話を聞いて回る。白洲次郎に似た慶応のラガーマン、頭山秀徳。大隈重信の脚を吹き飛ばした玄洋社事件の主犯・来島恒喜の法要を欠かさない頭山立國……語り部の登場だ。

たとえば頭山満の息子・秀三について。昭和27年7月21日、京浜蒲田駅前での反共演説会の帰路、彼は電車と衝突死した。

〈「まだ明るさの残る夜8時、オヤジは45歳だった」(息子・秀徳)

「叔父さんは殺されたんじゃないかと思うのよ」と秀三の姪・松任谷尋子は語っている。

「踏切の電柱に引っかかっていただなんて、そんなに高いところに飛ぶものかしら」
放り出された秀三の屍は、踏切上の電柱に吊り下げられているようにも見えた。〉

秀三の三男・興助は、こんな経験も語った。

〈「中学に入ったばかりの時、体育教師に体育館の裏に呼び出された。当時は日教組が華やかでね。先生が僕に言うんだ。『頭山、お前の家系を抹殺してやる。それが俺の生き甲斐だ』って」〉

日中和平とアジア独立解放を掲げ、東条の軍国主義に抗った頭山の玄洋社を、あまりにも影響力がありすぎると解散させたGHQ。右翼のレッテルは、頭山満の孫世代に厳しい逆風を浴びせていたことを玉子は知る。

 

49年後の「ノーサイド」

一方、松任谷家の風は軽やかで少しばかり甘酸っぱい。

頭山尋子が嫁いだ松任谷健太郎の腹違いの弟、功三郎。彼の息子がユーミンこと松任谷由実の夫・松任谷正隆である。

孫娘・尋子の結婚のはなむけに、頭山満は神宮外苑の一角に新居を用意したという。二人が居をかまえた「松任谷ビル」の地下には会員制クラブ『易俗化』があり、力道山や寺山修司、三島由紀夫が夜な夜な集った。

'67年には尋子の長女、國子が司会をつとめる歌謡番組『今週のヒット速報』がフジテレビで始まった。番組は人気を呼び、正隆の従姉である國子は女優として11本ものレギュラーを持つ売れっ子に駆け上がる。

〈「実は僕、松任谷という名前で苦労したんです」と正隆は回想する。
「松任谷」と姓を言うと、「もしかして、國子の親戚なのか?」と誰もが目を輝かせた。「サインなんか絶対貰うものかと思うこともたびたびでした。もちろん自慢の従姉でしたけど。でも、あまりにサインをせがまれるものだから」〉

頭山満の妻・峰尾の血を受け、絶世の美女だった國子だけでなく、松任谷の女性は皆、美女揃いだったという。前出の頭山興助は、玉子に「頭山のDNAで右脳の部分を引き継いだのが松任谷家だ」とも説明している。

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神宮外苑に佇む「松任谷ビル」の女主人・尋子がロイヤルボックスに座り東京五輪の開会式を目にした49年後の2013年。同じ国立霞ヶ丘競技場のグラウンドの芝生の上に立ったのがユーミンだった。

2020年に再び巡ってくるオリンピックのため、取り壊されるスタジアムで行われた最後の早明ラグビー。試合終了後、夫・正隆の伴奏と共に、ユーミンの『ノーサイド』が響き渡った。

'80年代、'90年代のラグビーブーム時代に青春を過ごした者の脳裏には常に流れていた名曲だ。選手よりもむしろ、ジャージを脱いだ観客席の男たちに涙する者が多かった。

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