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オランダ選挙、反移民「極右政党」の伸び悩みをどう見るか

ポピュリズム旋風に歯止め!?
小林 恭子 プロフィール

次の政権は「中道右派・リベラル・親EU」

反移民・反イスラム教の政治姿勢をオランダで明確に出したのは、ロッテルダムの大学教授ピム・フォルタイン氏だった。移民人口が増え、多様な価値観の存在を重視するオランダで、移民の存在に疑問を投げかけるのはタブーだった。

しかし、2002年、フォルタイン氏は、その政策に反対する動物愛護家に殺害されてしまう。総選挙の直前だった。同氏が率いた政党は第2党(26議席獲得)になり、連立政権の一翼を担った。

ウィルダース氏はフォルタイン氏の流れをくむ政治家と言える。

ルッテ氏がいうように、一言で言えば、今回の選挙は(英米から始まった)「ポピュリズム旋風を止めた」といえよう。

海外メディアが初期の世論調査から判断したような、「反移民の極右政党がオランダを席巻する」事態は発生しなかった。

 

今回の選挙で大きく票を伸ばしたのが30歳の党首ヤッセ・クレイバー氏が率いるグリーン・レフト党だ。そのモットーは「緑」、「社会主義」、「寛容」である。欧州に押し寄せた難民を「助けるべき対象」として見る。親EUでもある。

クレイバー氏は母が英領インドネシア人、父がモロッコからの移民だ。ワイルダー氏とは正反対の立場におり、オバマ元米大統領のモットー、「Yes, We Can」(やればできる)を口にする。

オランダの次の政権では、現在のところルッテ氏が第3期目の首相に就任することは確実だ。あと3党ほどが参加する見込みで、19議席を獲得し、政権参加の可能性が高いのがキリスト教民主党(CDA) とリベラル系の「D66」。いずれも親EUだ。グリーンレフトのクレイバー氏も閣僚職を得ると言われている。

中道右派、リベラル、親EUが次の政権の中心思想となりそうだ。

こうした流れの一方で、ウィルダース支持の国民の声も無視はできない。ルッテ氏が今回勝利したのは、ウィルダース氏を思わせるような、移民に厳しい姿勢を表明したからというのがもっぱらの見方だ。

1月、新聞に掲載された意見広告の中で、ルッテ氏はオランダの価値観に合わない人は「出て行け」と表明しているからだ。誰がこれに該当するのかは示されていなかったが、イスラム教徒の移民出身者を指しているのは明らかだった。

何世紀も前から宗教的迫害者を受け入れ、第2次大戦後は積極的な移民政策を実施してきたオランダの政治家の発言とはにわかには信じられないほど、きついメッセージだった。

オランダの有権者の大部分が、今回は反移民・反イスラム教を前面に出したPVV以外の政党を選択した。

しかし、英国のブレグジットや米大統領戦で見られたように、グローバル化の負の影響を受ける国民は少なくなく、近年のパリ、ブリュッセル、ベルリンでのイスラム系テロも記憶に残る。難民・移民への不安感、違和感は簡単には消えそうにない。