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オランダ選挙、反移民「極右政党」の伸び悩みをどう見るか

ポピュリズム旋風に歯止め!?
小林 恭子 プロフィール

しかし、選挙の直前になって複数の世論調査がPVVは第1党にはなれないという予想を出してきた。第1党どころか「第5党になる」と予測した調査もあった。議席数は30議席どころか、26ぐらい、あるいは最低20ぐらいではないか、と。

最終的に、PVVは20議席を獲得。第1党にはなれなかった。2010年の総選挙では24議席を獲得しており、当時よりも低い議席数だ。

しかし、ウィルダース氏はツイートで「ルッテ氏はまだ自分の最後を見ていない」と宣言。まだまだ消えないぞ、という意味を込めた。「前は第3党だった。今は第2党。今度は第1党になるぞ!」とも。

第1党維持に貢献? トルコとの外交衝突

ルッテ氏のVVDは第1党を維持し、ポピュリスト旋風を止めたことで勝利宣言をしたものの、前回の41議席から8議席低い数字だった。

ウィルダース党首の支持率に陰りが見えてきた投票日直前、ある事件がVVD支持に貢献した。トルコとの外交衝突である。

オランダは1960年代以降、労働量不足解消のため、これまでに歴史的つながりがなかったトルコやモロッコから「ゲスト労働者」を呼んだ。

やってきた移民は仕事が終われば帰国するはずだったが、その大部分がオランダに住み続けることを選択した。家族を呼び寄せ、トルコ系、モロッコ系移民としてオランダ社会の一員となった。

2重国籍を認めるオランダでは、トルコ系住民はオランダ国民とトルコの在外国民という2つの面を持つ。

これを利用しようとしているのが、トルコのエルドアン大統領だ。

 

トルコでは、4月16日、大統領の権限を強化する憲法改正案について国民投票が行われる。欧州に住む約500万人に上るトルコ市民からの支援にエルドアン氏は期待をかけている。

そこで、トルコ政府は、欧州各国のトルコ移民が多く住む地域で賛成投票を増やすための集会を開催しようとした。

ところが、オランダの第2の都市ロッテルダムの集会に出るはずだったトルコの閣僚らの演説をオランダ政府が治安上の懸念を理由に禁止。そのうちの一人については、ドイツ国境まで移動させた。

こうした流れを機に、12日、ロッテルダムのトルコ総領事館前ではトルコ系市民による抗議デモが発生した。

ロッテルダムの総領事館前で行われたデモを思い起こさせる、トルコ大統領のビラ(筆者撮影)

エルドアン氏はオランダ人を「ナチスのファシスト」に例え謝罪を要求すると、ルッテ氏は「容認できない」と強く反発。その後もエルドアン氏による暴言が続き、エスカレートしてゆく。

ルッテ氏は「議論をエスカレートさせないことが肝要だ」と述べながら、トルコ政府の対応を牽制した。

イスラム教徒が住むトルコのエルドアン大統領の一連の暴言でウィルダース氏のPVVが支持を拡大するかと思われたが、逆だった。

政権に参加していないウィルダース氏の発言は実行力を持たない。オランダ国民は、ルッテ氏の毅然とした対応に「いざという時に頼りになれる存在」を改めて確認することとなった。