妻たちがマジメに語る『夫のちんぽが入らない』問題

このタイトルで大ベストセラー!
週刊現代 プロフィール

「ちんぽが入らない」ことが夫婦だけの秘密であることも、この作品が読者の共感を呼ぶ理由の一つだ。

書評家の東えりか氏が語る。

「もちろん、筆者と同じことが、現象として読者にも起きているわけではありません。例えば、うちにも子供がいません。彼女の場合は、夫とセックスができないというのが、その理由の大部分ですが、私の場合はまた違う理由があるわけです。

夫婦を長くやっていると、他の誰にも言えないことって、どの夫婦にも絶対あると思います。

特殊な性癖を持つ夫婦、共謀して罪を犯している夫婦、駆け落ちして逃げてきた夫婦……。大きい、小さいの違いはあっても、そういうものがまったくないという夫婦、男女はいないんじゃないでしょうか。

読んだ女性はどこかで、『自分もこうやって夫とうまくいかないところがあるよな』と思えるところが出てくるんですよ。女の人がこの本を読んで泣けるというのは、『本当に辛かったんだろうな』と思う苦しみがいっぱい書かれているからでしょう」

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入らなくていいじゃないか

この小説にはそうした同情、共感だけではない別の感想もある。

「愛し合っているのにセックスができないという大きな問題を背負い続けている。とんでもなく不幸だと思ってしまいそうなのに、かわいそうだとかは思わなかった。

『入らない』という秘密を共有することで生まれたこの二人の驚異的なつながりは、私たち夫婦にはとてもかなわないと敗北感のような感情が湧いた」(47歳女性・事務)

 

そして、特筆すべきは担当編集者の髙石氏が「タイトルを面白がるだけでなく、こだまさんの文章の上手さをもっとたくさんの方に知ってもらいたい」と語るその軽快な筆致だ。

「夫の風俗通いを知りながら、見て見ぬふりをするんだけど、心の中ではすごく嫉妬している様子を隠さずに書いている。そんな妻の気持ちがよく理解できるし、文章が飄々としているぶん、よけいに健気で泣ける」(52歳女性・歯科助手)

称賛の声がある一方で「結局は職場や夫婦間の問題から逃げているだけ」という批判的な意見もたくさんあった。著者のこだまさんが言う。

「私は元来の内気さから『何でも話して解決する』という道を選べませんでした。私にできたのは受け入れること。自分や夫のしてきた『不道徳』といわれることも、『入らない』関係も、周囲の言葉も、受け入れた上で生きていく。

それは『普通』じゃないし、世間の人が言う『解決』ではないのかもしれないけれど、自分の中で折り合いをつけ、夫とこれからも生きていくというささやかな決意だと思っています」

あけすけなタイトルとは裏腹に、夫婦の在り方に正解などないのだということを考えさせてくれる本書。読めば、夫婦間に新たな「気づき」を与えてくれるはずだ。

「週刊現代」2017年3月18日号より