妻たちがマジメに語る『夫のちんぽが入らない』問題

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週刊現代 プロフィール

「この小説の中では、他の男性とはセックスできるのに夫とだけはできないようですが、ペニスの勃起の角度、太さ、体位など、様々な要因でそういうことは起こりえます。

局部に『切れグセ』があると、挿入しようとする度に出血してしまい、小説のようにセックスを控えるようになることもある。また女性はホルモンバランスが崩れると粘膜が乾燥してきて、濡れにくくなり、膣が閉まってしまうと、どうしても『入らない』という場合もある。ただ、こうしたケースは非常に稀です」

作中では局部にジョンソンベビーオイルやメロンの香りがするローションを塗ったりして、なんとか「入れよう」と、夫婦が懸命に努力する姿が描かれる。しかしそれでも入らない。それどころか無理して入れようとするために、陰部から大量に出血してしまい、諦めることとなる。

「このように結婚しているけれども、セックスをしたことがない、できない夫婦を医学的には『未完成婚』と呼びます」(前出の早乙女氏)

セックスレスという言葉ではくくれない『おとちん』夫婦の過酷な状況は想像を絶する。それでも、二人は離婚せずに夫婦であり続ける。

「私たち夫婦もいまや完全なセックスレスで『ちんぽが入らない』関係ですが、それでも仲良くやっていけているのは、かつてセックスを一生分、赤玉が出るまでヤリまくったからじゃないかと思っていた。

やり尽くしたからこそ生まれる『情』が、その後の夫婦を結びつけると信じていたから、本を読んで、物理的に入らないカップルの存在を知り、価値観がひっくり返りました」(38歳・主婦)

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読んだ女性が泣く理由

そして30歳を過ぎた頃、「私」はこれまで一度も真剣に考えなかった「出産」を意識し始める。夫も子供を望んでいるはずだ。痛くても血まみれになってもいいから、受精さえすればいいと、元々は全く子供に興味がなかった「私」に心境の変化が起こる。

エッセイストの大泉りか氏はこう語る。

「『私』が『ちんぽ』を通して二つの価値観に揺れているという印象を受けました。

『結婚にこだわらない』新しい価値観を持ちつつも、『結婚して子供を産む』という古い価値観も完全には捨てきれない。

女優の山口智子さんが『子供を産んで育てる人生を望まない』と宣言し、多くの共感とバッシングを同時に受けたことがありましたが、正解はありません。今でも日本は、二つの価値観の中で揺れているといっていい。だからこそ多くの読者の共感を得ている」

葛藤を抱えつつも、「産む」決心をした「私」は妊活を始める。持病である「自己免疫疾患」の薬が胎児に影響を与える危険性があったため、薬も絶つ。しかし、服用を辞めると身体は目に見えて弱り、高熱でうなされ、「受精」どころではなくなってしまう。

「私も不妊治療で辛い日々を送ったので、主人公と同じく、世間の無邪気な『子供はいつ?』という言葉にさんざん苦しみました。でも、この本の夫婦は加えて、『ちんぽが入らない』から子供が生まれないという、誰も想像さえしない理由を抱えている。どんなに苦しかったかと思い、涙が止まりませんでした」(45歳女性・栄養士)

 

著者のこだまさんもこう語る。

「セックスをする、子供を産む、それは本当にお互いがしたいことなのか。『しなければいけない』ものという考えに縛られていたように思います。母には会うたびに『そろそろ子供を』と言われていましたが、あるとき『まだ避妊してるの?』と訊かれ、もうこれ以上踏み込んでこないでほしい、としばらく会うのをやめました。

私は親に事情を話せなかったので、行き過ぎと思える母の言動も今思えば仕方ないことでした。子供を産むかどうかはその夫婦が決めること。今なら母にそう言えます」

ちなみに、こだまさんの夫はこの本の存在に気づいていないという。

セックスができない、子供もいない。それでも寄り添って生きていく夫婦の有り様には、共感の声が絶えない。

「はあちゅう」こと作家の伊藤春香氏が語る。

「体の関係がなくても幸せだったら結婚したいです。この夫婦は二人とも、生き辛さを抱えている。生きているだけでいいじゃんという究極の境地にたどり着かせてくれる本だなと思いました。本当に、生きていたら、それだけで尊いんですよね。

でも、そういうことを忘れがちだから、『理想の夫婦はこうでなくちゃいけない』、『やっぱり子供がいなくちゃ幸せじゃない』と思っちゃう」