あなたの口座に「眠った預金」に、国が狙いをつけたワケ

これほど使い勝手のいい資金はナシ

「便利な税金」の暗い未来

もうひとつの理由は、誰に税金を払い、誰に払わないかを決めるのが政治家の権力の源泉だからだ。スポーツ競技団体を支援する政治家が威張れるのは、スポーツ振興のための公金を分配できるからだ。当然彼らは、「スポーツくじの収益の使い道は議会が決めるべきだ」という正論をぜったいに認めないだろう。

同様に休眠預金活用法でも、「公金を国庫に納付させる」というもっともシンプルで正しい選択肢は最初から排除されている。そんなことのために頑張っても、政治家もNPO団体もまったく報われない。「カネ」と「権力」のインセンティブがなければ、議員立法で法律をつくるという面倒なことなど誰もやろうとは思わないのだ。

さらに都合のいいことに、休眠預金という「税金」を支払うのは、預金を放置しておいた「愚か者」だけだから、預金口座をちゃんと管理している大半のひとには関係がない。納税者が特定の層に偏っているという意味では休眠預金は宝くじの収益金と同じで、政治家にとってこれほど使い勝手のいい資金はほかにないのだ。

とはいえ私は、年間500億円と試算されるこの便利な「税金」は今後、先細りになっていくと考えている。

マイナンバーの導入によって日本も、北欧のようにすべての行政情報を「国民総背番号」で管理する社会の構築を目指すことになった。行政情報のなかには当然、徴税のための収入や資産も含まれる。今後、銀行や証券、保険会社の口座はすべてマイナンバーに紐づけされ、税務当局のデータベースに集約・管理されることになるだろう。

こうした政策はジョージ・オーウェルが『1984』で描いた超管理社会を連想させ嫌われるだろうが、ひとつだけたしかな効用がある。口座情報が戸籍や住民票と統合されれば、外国人の口座など特殊なケースを除いて、預金者の判明しない休眠口座はなくなるはずだ。

こうして「休眠口座の活用で社会貢献」という目論みは、早晩、とらぬ狸の皮算用になるだろう。