あなたの口座に「眠った預金」に、国が狙いをつけたワケ

これほど使い勝手のいい資金はナシ

これが正しい使い道

世界的に見れば休眠口座の預金を差し押さえる国は多くないが、銀行の利益にするくらいなら公のために使った方がいい、というのは一理ある。

とはいえ、休眠預金活用法に諸手を挙げて賛成、というわけにはいかない。それは、資金の使い道に疑問があるからだ。

法案によれば、休眠口座の資金は民間の「公益活動」に充てられることになる。具体的には、「(1)子ども及び若者の支援、(2)日常生活等を営む上で困難を有する者の支援、(3)地域活性化等の支援」の3分野にかかわるNPO法人に支払われることになるようだ。

しかしそれ以外にも、公益のためのお金の使い方はいくらでもある。

死者9名を出した中央自動車道の笹子トンネル天井板落下事故で明らかになったように、日本では高度成長期につくられた橋梁、道路、トンネルなど社会インフラの老朽化が大きな問題になっている。だったら、こうした「朽ちるインフラ」の補修費に休眠口座の資金を使ってはどうだろう。

失業者をいくら支援しても、彼らを雇用する企業がつぶれてしまっては元も子もない。そう考えれば、休眠口座の資金はグローバル競争を勝ち抜くため、先端企業の研究開発費に充てるべきかもしれない。

さらには、「日本を元気にするには2020年の東京オリンピックで一つでも多くのメダルを取ることだ」と主張する政治家がいるかもしれない。彼は、「休眠口座のお金はスポーツ振興に使うべきだ」というだろう。

このように、公金を使う政策にはそれぞれ理屈がある。そして、社会が複雑になりひとびとの利害が対立するなかで、どの政策が他より優れているかを決める便利な物差しはない。だからこそ民主政治では、選挙で選ばれた政治家が議会で討論し、有権者=納税者の監視の下で政策の優先順位を決めることになっているのだ。

このように考えると、なぜ休眠預金活用法がうさんくさく思えるかがわかるだろう。要するにこの法案では、民主政治のプロセスをバイパスして、休眠預金=公金を特定の政治家と、特定の団体の裁量に任せることになっているのだ。

なぜこのようなことになるかというと、ひとつは民主的な手続きがものすごく面倒くさいからだ。東京オリンピックをめぐるもめごとを見てもわかるように、オリンピック開催という総論には賛成しても、資金分担を求められるとどの自治体も大反対する。利害の調整がどれほど大変か身に染みている政治家が、TOTOなどの宝くじの収益をスポーツ振興に充てようと考えるのは当然のことだ。

ちなみに宝くじは、その期待値(賞金×当せん確率)の低さから「愚か者に課せられた税金」と呼ばれている。宝くじを買わない有権者はこの税金を払わないのだから、彼らにとっても、「愚か者」のお金でオリンピックを楽しめる方がずっといい。これが、ジャンボ宝くじやTOTO、競馬・競輪など公営賭博の収益を特定の組織・団体に分配することにさしたる抵抗がない理由だろう。

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