トランプ政権の屋台骨を揺るがす「5人の弁護士」に注目せよ

トンデモ法曹から目が離せない【後編】
山口 真由 プロフィール

②アメリカ・ファーストの貿易弁護士

アメリカの通商交渉を一手に引き受ける「通商代表部(USTR)」代表には、ロバート・ライトハイザー弁護士が指名されている。「アメリカ・ファースト」の信奉者であり、人生を賭けてそれを体現してきた人物だ。

ライトハイザーは、レーガン政権で通商代表部代表代行を務めている。「ジャパン・バッシング」(=日米貿易摩擦の深刻化を受けて、アメリカは70〜80年代、日本に市場開放と輸入拡大を強く迫った)の最前線で、日本に圧力をかけたのが彼だ。厳しい交渉の結果、日本はアメリカへの輸出品の価格を引き上げ、アメリカの農産物に対して市場を開放することを余儀なくされた。

レーガン政権を離れたあと、彼は「スキャデン・アープス」という一流法律事務所のパートナーに就任。アメリカの名だたる大企業をクライアントに持ち、その外国進出を支援している。外国製品から国内市場を守り、アメリカの輸出を増やす「アメリカ・ファースト」は、政権を離れたあとも彼のブレない軸というわけだ。

 

豊富な貿易関連の知識を持つライトハイザーは、交渉上手でも知られる。レーガン政権における「日本叩き」の急先鋒だったことから、高圧的な交渉人をイメージするかもしれないが、逆に、彼の持ち味はそのソフトでフレンドリーな交渉にあるという。

巧みに相手の心をとらえ、お互いの共通利益を描き出し、知らず知らずのうちに丸め込んでいく――ハーバードで教える交渉術の授業によれば、ホンモノの交渉上手は、相手を論破するタイプではなく、ライトハイザーのような紳士的な説得型なのだそう。

実際、日本のほか、韓国やメキシコにも対米鉄鋼輸出の自主規制を飲ませたライトハイザーは、アメリカ鉄鋼業界から守護神のごとく崇められたのだから、その実力は、折り紙つきだ。

③金融業界に染まりすぎた弁護士

証券取引を監督・監視する「米国証券取引委員会(SEC)」のトップに指名されたのは、ジェイ・クレイトンというスター・コーポレート・ロイヤー(企業法務を担う弁護士)である。

企業法務は、弁護士業界のなかでも最も稼げるフィールドで、クレイトンはそこで華々しい活躍をみせてきたエリート弁護士だ。自らの身内とも言えるウォール街に対して厳しい規制をできるのか、懸念される。

証券取引委員会(SEC)本部ビル〔PHOTO〕gettyimages

クレイトンは、「サリバン&クロムウェル」という世界屈指の有名法律事務所のパートナーとして働いている。この事務所には毎年、ハーバードやイェール卒の優秀なアソシエイトたちが入所する。パートナーまで上りつめるのはおよそ30人に1人。クレイトンが競争社会の勝者であることはこの数字からして間違いない。

問題なのは、その能力ではなく、彼が金融業界に染まりすぎているところだ

米金融大手ゴールドマン・サックスの顧問を10年以上務めたほか、ウォール街の名だたる会社をクライアントに持つ。中国の電子商取引最大手・アリババ集団の上場や、米プロバスケットボール協会(NBA)チームの身売りなど、巨額案件をいくつも成功させた花形弁護士は、常に投資銀行や巨大企業の味方についてきた。

さらに、クレイトンはゴールドマン・サックスに20年近く勤める妻を持つ(「ブルームバーグ」2017年1月4日付)。ウォール街は、文字通り彼の「身内」なのだ。
ウォール街の住人としてその価値を体現している人物が、ウォール街を規制するポストに指名されるのは異例のことだ。

低所得の白人たちが支持者の核と言われるトランプ大統領だが、こうした人事を見ると、投資や金融政策については、富裕層に有利な政策を推し進めようとしているのかもしれない。