「東芝崩壊」傲慢・怠慢・無責任にひた走る日本企業の難病

会社を維持する以上に「大切なこと」
辻野 晃一郎 プロフィール

将来有望な優良事業を救い出せ

今回、債務超過が回避できない深刻な状況に再び追い込まれた東芝にとっての次なる売却対象が、稼ぎ頭のNAND型フラッシュメモリーを擁する半導体事業だ。

NAND型のフラッシュメモリーは、今やありとあらゆるデジタルデバイスや、クラウド時代を支えるサーバー用のストレージとして不可欠なものだが、東芝が世界に先駆けて商品化したコアデバイスだ。

100%売却すれば、2~3兆円程度の価格になるともいわれており、入札には10社近くが名乗りをあげたようだ。その中には、NAND型の製造で東芝とも関係の深いサンディスクを傘下に収めたウエスタンデジタルなどの順当な候補に加えて、シャープを買収したホンハイの名前もあがっている。

裏話になるが、私は、ソニー本社の技術戦略スタッフとして働いていた30代前半の頃、このNAND型フラッシュメモリーの将来性に目を付け、サンディスクへの資本参加または同社との業務提携を当時のソニー経営陣に進言し、その実現に向けて奔走した経験がある。

そのため、NAND型フラッシュメモリーやサンディスクの創業者であるエリ・ハラリー氏については、さまざまな思い出がよみがえる。結局、その時のソニーは、NAND型フラッシュメモリーへの本格投資には踏み切れなかった。

東芝が、医療関連事業に続いて、半導体事業のように、一連の不祥事とは何の関連もない優良事業を、不祥事の尻ぬぐいのような形で売却しようとしていることについては、前述のような感傷を禁じ得ない。

しかし一方で、日本が世界トップクラスのシェアを維持するこのようなビジネスがこのまま東芝の内部に留まり駄目になっていくよりは、これを機会に切り離されて身軽になる方が、産業振興や雇用確保の面からははるかに望ましいとも感じている。

IoTやクラウドの時代を迎え、NAND型フラッシュメモリーには、引き続き大きな将来性がある。

そもそも、素早い決断やアクションが求められる半導体ビジネスを、何のシナジーもない重厚長大なエネルギー事業などと一緒にくくっておく必要などどこにもない。デジタル家電事業の競争力低下やその見直しと共に、半導体事業の売却や独立分社化は、今回の件とは無関係にもっと早くから実行されていてもよい選択肢だったと思う。

東芝といえば、石坂泰三や土光敏夫など、かつては、我欲を超越したスケールの大きな経済人を輩出してきた日本が誇る名門企業の一つだ。そんな企業がここまで凋落し、崩壊していくことは残念なことには違いない。しかし、ここで大切なことは、「会社」という枠組みを維持することではない。

本当に大切なことは、ウェスチングハウスという最悪の不良債権を自ら抱え込んだ挙句、一気にメルトダウンが進んだ母屋から、一刻も早く将来有望な優良事業を救い出すことだ。もはやこうなった以上、そう割り切るしかないだろう。

東芝の問題は、多くの日本企業にとって、決して対岸の火事ではない。冒頭に述べたように、権力者や大企業の傲慢、怠慢、無責任体質は日本のあらゆるところにはびこっている。シャープや東芝の事例は、その他すべての企業の経営者や従業員にとって、自己変革を急ぐ教訓としなければならないものだ。

現状にタカをくくり、問題解決の先送りやその場しのぎでお茶を濁し続けている企業にとっては、明日は我が身と知るべきであろう。