家族と一緒では生きづらい…超高齢化社会にひそむ「本当の問題」

邪魔者扱いされていく高齢者たち
藤田 孝典

それを続けていくことが困難な現役世代は実に多いことだろう。また親を扶養できないことを安易に責めることもできない社会構造がある。

そういう点で、まり子の家庭や同居家族は、それぞれに現代的な課題を抱えながら狭い家で共存をしている。よく日本社会を隅々まで把握されているものだと感心してしまう。

だからこそ、家族との関係性に耐え切れなくなったまり子は家出をし、その後の住まいを探す。この際も民間賃貸住宅を借りようとするが、高齢者ゆえの入居差別に遭い、家すらも単独では借りられない事実に直面する。

80歳だと家を借りにくい… (C)おざわゆき

居室内での孤独死を警戒して、大家や不動産屋は高齢者の入居を断る事例が後を絶たない。身寄りのない、家族を頼れない高齢者は最低限必要な住まいを得る際も困難が伴うのだ。

わたし自身も数多くの高齢者の入居契約時に緊急連絡先になり、そのうち数件は死後の遺品整理や家族への連絡、遺体の葬儀に関わってきた。これらを大家や不動産屋が調整をしながら行うとなると、不本意ながらも入居を制限してしまう心理状態に理解を示さざるを得ない。

 

孤立を極めていく…

そして、まり子は作家の仕事が減り、自身の社会内における「役割喪失」も体験している。80歳で仕事があること自体珍しいが、その仕事も年々減っており、孤立感を強めていく状況が理解できる。

仕事を失うということは多くの人間関係や出会いの機会も同時に失うことを意味する。意識して地域活動や老人クラブ活動などに関わらなければ、他者と交流する機会は激減する。

高齢者のコンビニ弁当食・孤食の場面も描かれているが、食事だって誰とも共にすることがない高齢者は非常に多いのだ。

大手コンビニでは宅配食事業を始めているし、一人暮らしの人々を意識した商品の提供に急速にシフトしていることも店頭を覗くだけで理解できるだろう。現在でも一人暮らし高齢者は、約600万人存在する。今後も増加していくことが予想されている。

結局のところ『傘寿まり子』を読んでみて、わたしが出会ってきた生活困窮者支援の相談支援現場や高齢者支援の現場をよく捉えていると思う。特別な誰かの問題ではないからこそ好評なのだ。実に誰にでも起こりうる庶民の生活に迫ったテーマなのである。

ハラハラしながら自身や身近な家族とまり子を重ね合わせ、静かに応援してしまう感情が動く。深く考えながらでもいい、クスッと笑いながらでもいい、是非読んでほしい。

現代を果敢に生きるひとりの高齢者から得られるものはあまりにも大きいのだから。

「現代ビジネス」では『傘寿まり子』の第1話と第2話を特別公開中です。下記よりお楽しみください。
・第1話『まだ生きててごめんなさい…「まり子80歳、今日家を出ます」』
・第2話『「孤独死するから?」入居差別に苦しむ80歳の老女が向かった先とは』