元西武「左のエース」帆足和幸が選んだ「バッピで燃え尽きる」人生

通算90勝、日本シリーズでも大活躍
週刊現代 プロフィール

バッピの仕事とは何か

楽天の主砲として、帆足と幾度も対戦した山崎武司が振り返る。

「ウチにとって帆足はホントに『天敵』だった。本来なら、左ピッチャーに対しては俺たち右バッターが有利なはずだけど、帆足のボールは右バッターのインコースで自然に曲がって食い込んでくるからタチが悪い。真っすぐだと思ったら、ボール2つ分くらい内側に入ってくるから、ヘタに振りにいくと詰まってしまう。

チームの会議で『帆足のインコースを徹底的に見極めろ』って対策を立てたんだけど、そこばかり意識していると、持ち前のコントロールで今度は外角を攻めてくる。手の内が読まれてるんだよ。調子がいいときの帆足はもう、お手上げだったね」

打者のタイミングを狂わせるフォームと、手元で微妙な変化を見せる「クセ球」。現役時代を支えた2つの「武器」は皮肉にも、バッティングピッチャーとして第二の人生を歩み始めた帆足を、大きく苦しめる。

「フリー打撃でバッターのタイミングがずれたら、それは打ち損じたバッターが悪いんじゃない。『一定のリズムで気持ちよく打たせてあげられなかった』という、バッピ側の『失敗』なんです。

とにかく、マシンのように同じタイミング、同じテンポで投げ続けなくてはいけない。現役時代にバッターのタイミングを外すクセが身についていた僕にとって、これは本当に難しかった。『あ、ヤバい、ずれた。もっとゆっくり投げなきゃ』とか考えていると、今度はストライクが入らなくなる。悪循環です」

「打たれたくない」という、「エースの本能」もまた、バッピの仕事には障害となる。

「いい当たりを飛ばされると、自然と力んでしまうんです。『打たれていいんだ……』と自分に暗示をかけながら投げているんですが、どうしても力が入ってしまうクセが抜けなくて、最初はかなり手こずりました。

コントロールにはそれなりに自信があったので、『狙ったところにいつでも投げられる』と思っていた。でもいまは、ボールが指にひっかかり思ったところにいかない。マウンドの2mくらい前から投げてるはずなのに、キャッチャーがひどく遠く見えるときもある」

悩んだ帆足は、現役時代と同じく、ひたむきに「努力」を繰り返す。

「ホークスにはベテランの打撃投手の先輩が何人もいる。キャンプ中も選手が休憩している間に、ずっとキャッチボールにつきあってもらったり、打席に立って球筋を見てもらったりして、とにかく暇があれば『バッピの練習』をしています。

打ちやすい回転の球を放るために、現役時代よりだいぶ上から投げるようにフォームも改造しました」

バッピになって1年。ようやく感覚がつかめてきたという今年、帆足にはもう一つ仕事が増えた。球団広報を兼務することになったのだ。

「毎朝、8時には球場にきて、取材の段取りなど広報の仕事をする。そこから、バッピとして投げつつ、球拾いや用具の出し入れをして、今度は選手の取材に立ち会う。息をつく暇もないですが、選手たちと関わる時間が増えて、人との接し方もだいぶ変わってきました。

例えば、取材が入るときは『テレビがあるので、20分お願いします』と取材対象の選手にかならず頭を下げます。選手がいい気分で野球に没頭できる環境を作ってあげられるよう、気遣いを欠かさないようにしています」