カネロ対チャベスJr戦はなぜ好意的に受け入れられているのか

突っ込みどころ満載だが…
杉浦 大介 プロフィール

米国での知名度に欠けた対戦候補

2、カネロは他に目ぼしい対戦相手が乏しい

近況の良さ、格で言えば、カネロにはチャベスJrよりも適切な対戦相手が存在したのは周知の事実である。

例えば指名挑戦権を持っていたWBO世界ミドル級王者ビリー・ジョー・ソーンダース(イギリス)、元IBF同級王者デビッド・レミュー(カナダ)と戦えば、本格派好みのファンはより納得したに違いない。

ただ、ベルトは戦ってくれないのが米リングである。タイトルホルダーではあっても、ソーンダースの知名度はアメリカではゼロに近く、同国でのカネロ戦は特大イベントにはならない。また、スター性のあるレミューもまだ母国以外ではビッグスターとは言えない。

繰り返すが、“ミドル級再進出を進めたいなら、カネロはソーンダース、レミューのいずれかと戦えば良い”という指摘はもっともでもある。

しかし、この2人と対戦してもビジネス面で旨みがないことはファンも十分に理解している。それゆえに、カネロがソーンダースよりも、チャベスとのノンタイトル戦に向かったことに多くの人が納得したのだ。

 

盛り上がりは必至の同胞対決

3、興行的成功は間違いない

試合のレベルはともかく、カネロ対チャベスJr戦が正真正銘のビッグイベントであることは誰も否定できまい。2の項とも被ってくるが、この一戦の興行成績はソーンダース、レミューらとの対戦とは比べ物にならないはずだ。

「2人はメキシコの街をまっすぐ歩けないほどの人気者たち。メキシコ人同士の対戦という意味では史上最大のカードかもしれない」

デラホーヤの言葉はいつもながら大げさだが、今回ばかりは間違いだとは言い切れない。幼少期のカネロはチャベス父に憧れていたというヒストリーもあり、まさに因縁の対決。バックグラウンドだけ考えれば、シンコ・デ・マヨにこれほど相応しいカードもない。

フロイド・メイウェザー引退後、カネロは現役では最大の興行価値を誇るボクサーになった Photo By Rich /Golden Boy Promotions

メキシコ人、メキシコ系アメリカ人は母国のライバル対決に沸き返っており、ラスベガスのファイトウィークは素晴らしい雰囲気になるだろう。最近はボクシングのPPV 売り上げは軒並み不振な中で、どれだけの数字を残すかは実に興味深い。

ボクシングはスポーツ・エンターテインメントであり、カネロ対チャベス戦は最大級のビッグイベント。技術レベル的に最高級のカードではなくとも、見逃せないアトラクションであることは間違いない。

ある程度このスポーツを追いかけてきた者なら、この試合に少なからずの興味を惹かれているのではないか。一見すると同胞の2人を組み合わせた安易なカードにも映るが、先々にまで繋がり、同時に当面の儲けも得られるという意味では巧みなマッチメークだと言っていいのだろう。