ゴーン社長「退任」は自動車業界"大再編"の号砲だ【内幕レポート】

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井上 久男 プロフィール

ホンダの中堅幹部も言う。

「うちはハイブリッド、燃料電池などトヨタの後追いをするばかりで、結局は『ミニ・トヨタ』になってしまい、マーケットでの存在感が低下している。今後7~8年先くらいまでの商品戦略を見ても、これで熾烈な競争に勝てるのかと背筋が寒くなる」

ホンダにとって厳しいのは、これまで貫いてきた単独主義から脱しようにも、すでに多くのメーカーはトヨタ勢、日産勢の軍門に入り、いまさら手を組める目ぼしい相手がいない。

そうした中、ホンダの八郷隆弘社長は2月7日、日立と提携すると突如発表して業界を驚かせたが、これにしても「苦しい提携劇」と見る向きは少なくない。

 

今回の提携劇は、ホンダと日立オートモティブシステムズが、EVなどに使うモーターの合弁会社を設立するもの。ホンダは自前の開発に限界があると判断したわけだが、実は新しく作る合弁会社は51%を日立、49%をホンダが出資し、経営の主導権は日立側に握られることが決定している。

本来であれば自動車メーカーにとって部品メーカーにすぎない日立に主導権を握られるということの意味は、実は大きい。

なぜなら、いま世界の自動車業界の勢力地図を見渡すと、部品メーカーがかつてないほどに力をつけて、完成品メーカーを支配しかねない状況が生まれつつあるからだ。

実際、ドイツでは部品メーカーのボッシュなどが積極的なM&A戦略で拡大、特許の公開件数でも部品メーカーがVWやダイムラーなどの完成品メーカーを上回り、力関係ではすでに「逆転現象」が起こっている。

1兆円規模という巨額の買収も手掛けるようになった部品メーカーが、そのうち完成品メーカーを支配する日が来てもおかしくはないと言われているのである。

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当然、同じことがこれから日本で起きても、なんら不思議ではない。「そうした観点から見た時、今後日本国内では系列部品メーカーを含めた業界再編の軸になるのがホンダになる」と、あるコンサルタントは指摘する。

「現在、自動車事業に積極的に乗りだそうとしているのが日本電産です。永守重信社長の強烈なリーダーシップのもとで買収攻勢を仕掛け、メーカーの元幹部らをスカウトして人材強化も図っている。

その日本電産がホンダ勢を狙ってくる可能性が十分にある。すでに'14年には、ホンダとNECの合弁会社で電動化技術に強いホンダエレシスを約500億円で買収。現在、ホンダ系で電子制御を得意とする上場企業のケーヒンが単独での勝ち残りが難しいという声が出ている中、永守社長がケーヒンをターゲットにしてもおかしくない」

つまり、日立や日本電産がホンダとの提携や買収で力をつけて、自動車業界で立場を急速に高めていくシナリオすらも考えられるわけだ。

こうした系列下請けや部品メーカーの動向は、地味な話題であるため主要メディアではあまり報じられないが、今後の業界再編の最も重要なキーとなる。

実はトヨタも危機感を強めていて、系列メーカーの再編に必死に動き出している。たとえばトヨタ系でブレーキ国内最大手のアドヴィックスという会社は昨年、トヨタ系のデンソーが出資比率を18%から一気に34%に高めたばかりなのである。

「アドヴィックスが得意とするブレーキ技術は、今後は電子技術と融合していき、自動運転時代には欠かせない重要技術の一つになる。

そんな未来を見越して、トヨタはグループとしてアドヴィックスへの『支配力』を強める狙いがある。2年前には『プリウス』の開発担当を務めた、開発のエースだった小木曽聡常務役員を社長に送り込んだほどです」(トヨタ系部品大手の幹部)