ゴーン社長「退任」は自動車業界"大再編"の号砲だ【内幕レポート】

これから起きることをぜんぶ書く
井上 久男 プロフィール

そもそも、この提携は世界販売台数が約287万台の規模では将来的に生き残りは厳しいと鈴木会長が判断して、豊田章一郎名誉会長に助けを求めて決まったもの。

87歳の鈴木会長と92歳の豊田名誉会長が話し合って決めたことから「遺言提携」とも呼ばれてきたが、今後はトヨタがスズキに出資するのが確実な流れになってきた。

「この提携はトヨタによるスズキ救済という側面だけではなく、トヨタにも大きなメリットがあるのがポイント。というのも、いま自動車業界では『2000万台』の事業規模がないと生き残れない時代が来ると指摘され始めている。

世界1、2位を争う独フォルクスワーゲン(VW)やトヨタは現在、グループを入れた全世界販売台数が1000万台程度あるが、それでも足りない。

トヨタは傘下にダイハツ工業、日野自動車を抱え、富士重工業、いすゞとは資本提携、'15年にはマツダとの業務提携も決めた。実は、この6社の販売台数にスズキの287万台を加えれば、約1800万台に到達する。つまり、2000万台が視野に入ってくる」(自動車メーカー元役員)

AI、自動運転、電気自動車(EV)など開発すべき先端技術が年々増える中、1社ですべてを賄うには莫大な研究開発資金が必要となるので、生き残りのために各社が寄り集まる。いま自動車業界で規模拡大が至上命題なのは、そうした背景事情がある。

 

日産自動車は2月8日、'16年の世界販売台数がグループで996万台に達したと発表したが、これにしても日産とルノーの計873万台に、昨年電撃買収した三菱自動車の93万台を加えてようやく積み上げた数字。

日産は積極的な買収攻勢を仕掛けることで、世界1位のVW(1031万台)、2位のトヨタ(1017万台)、3位米ゼネラルモーターズ(1000万台)から引き離されまいと必死になっているわけだ。

「実は日産のカルロス・ゴーン社長はスズキ買収を狙っていたが、ゴーン氏を嫌う鈴木会長がその動きを察知してトヨタを頼ったとの見方をする人もいる。

もし日産がスズキを傘下に収めれば、一気に世界1位に躍り出ることができた。実際、それがゴーン氏の野望でもある。ゴーン氏は次に、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)を狙うのではないかとも言われている」(業界担当記者)

こうしたトヨタ、日産の動きに比して、規模拡大競争で取り残されつつあるのがホンダである。

いま自動車業界で最も読まれているのが、三菱UFJモルガン・スタンレー証券が昨年10月に出したレポート「非連続イノベーションが自動車産業に迫る100年ぶりの大変革」。

中でも、このレポート内で話題なのが、「ホンダの危機」を象徴するとされるグラフで、横軸に自動車販売台数、縦軸に純利益率を取り、国内外の主要メーカー各社をその実績値でプロットしているものである。

ホンダの危機

グラフをみると、右端の1000万台前後に位置するトヨタやGMなど大衆車を主力とする企業は、利益率が6~8%と高水準。

また、左端の200万台前後に位置する自動車メーカーも利益率が高く、ダイムラー、BMWなどのドイツ勢やマツダなどが並ぶ。いずれも、プレミアムブランドか、特徴ある車を造る会社である。

一方で、中央付近の400万~500万台のメーカーは、利益率が0~2%ほどと著しく低いが、そのボトム(底)にFCAとホンダがいる。

このグラフが意味するのは、ホンダはプレミアムブランドになれるわけでもないうえ、特徴のない会社になったことで、大衆からも見放され始めたという厳しい現実だ。