アスクルはどうなる?「倉庫大火災」が露わにした物流リスク

被害総額は500億円を超える
週刊現代 プロフィール

保険金は出るのか?

ここで気になることがある。自らの倉庫内で不始末で出火、全焼した場合でも火災保険は支払われるのだろうか。

前出の広報担当者は、「保険には入っておりますが、範囲とか対象といった詳細については、お答えすることができないんです」と口を閉ざす。そこで、大手損保会社の社員に分析してもらった。

「建物の中で焚き火をしていたとか、禁煙区域での喫煙が常態化していたとかなら話は別ですが、何らかのトラブルで出火した場合には保険金が支払われるはずです。

こういった物流センターが入る保険には3種類あります。一つは、建物の購入費に関わるものです。もう一つは保管していた商品に対する保険です。通常なら、在庫品に対しても保険をかけているはず。もう一つは火災によって物流が機能せず、営業損益が発生した場合にそれを補償する保険です。

アスクルの場合も、物流センターが止まった場合のリスクを想定して、保険をかけていたはずです。これらの保険料は年間の総額で2500万~3000万円程度と推測されます。損失の程度を確定させるまで時間はかかるかもしれませんが、確定次第、保険金が支払われるでしょう」

火災そのものの損害とは別に、最大のリスクは配送の遅れによってEコマース(電子商取引)市場で決定的な遅れを取り、市場から弾き出されてしまうことである。

元々、アスクルは文房具製造大手のプラスの企業用通販部門だった。'93年に当時、同社の事業部部長だった岩田氏が中心となってオフィス向け事務用品通販を開始した。

その名のとおり、発注した翌日に届ける(=明日来る)仕組みは当時としては画期的で、利用する法人が急増。'97年にアスクル事業を分社化し、岩田氏が社長に就任した。'00年の上場後も業績は拡大を続け、直近の連結決算では年商3000億円を達成している。

そんなアスクルが法人向けオフィス用品通販に加えて、将来の事業の核に据えたのが、一般消費者向けの日用品通販サービス「ロハコ」だ。

'12年にこれまでに培った配送システムを活用して、個人向けに飲料水や食品などの通販を開始。1900円以上購入すれば、送料は無料だ。このサービスでアマゾンに対抗する――社運を賭けたプロジェクトだった。

岩田氏はインタビューでこう話している。

「EC(ネット通販)の普及とともに、企業向けか個人消費者向けかは関係なく、あらゆる流通がインターネットを通して行われる時代が来ると思いました。ここは思い切って会社を変えていかないと、10年後に会社が存続できるのか、という危機感もありました。

我々がいま『ロハコ』で目指しているのは、洗剤やトイレットペーパー、水、食料品など日常使いのもののECです。アマゾンや楽天が得意とするECは、本や家電、地方の名産食品などですが、これからは日常品をすべてECで買う時代が来ます。

特に子育てしながら働いている人たちの負担軽減につなげたいと思っています。アマゾンや楽天が第1世代とすると、我々は『第2世代のEC』を標榜しており、この分野で先行者になりたい」(『週刊エコノミスト』'14年11月25日号)

アスクルは、ネット大手ヤフーと資本提携を行って330億円を調達。これを元手に物流センターを整備し、首都圏での当日配送や東日本地域での翌日配送を実現したのだった。

評判は上々で、ロハコの利用者は年々増加しており、昨年7月には300万人を突破。榮倉奈々が出演するテレビCMも放映し、徐々に世間に浸透してきた。

とはいえ、黒字化はまだまだ先だった。'12年のサービス開始初年度から赤字を計上し、その後、30億円超の赤字を毎年続け、今期('17年5月期)も480億円の売上高ながら、39億円の赤字を見込んでいた。

「集約」したがゆえの悲劇

将来性に期待して続けられてきたロハコが中核施設として位置づけていたのが、今回焼け落ちた物流拠点だ。アスクルは同施設内に7万種類の商品を保管していたが、そのうち実に3万点が食品や生活雑貨といったロハコ向けの商品だった。

迅速な配送を実現するために物流センターを集約してきたがゆえに起こった悲劇。

東日本と首都圏をカバーする中核施設が灰燼に帰してしまった今、立て直すことは容易なことではなく、代替施設が横浜にしかない以上、赤字幅が膨れ上がることは間違いない。