アスクルはどうなる?「倉庫大火災」が露わにした物流リスク

被害総額は500億円を超える
週刊現代 プロフィール

無力だったスプリンクラー

消火作業に従事した消防隊員は、本誌の取材にこう語った。

「なかなか鎮火できない理由は、消火を遮る外壁です。2階部分に窓が少なくて開口部が小さく、消火作業が遅延しています。大型重機で数ヵ所、開口部を設け、そこから高圧放水をしています。

2月20日の朝に消防隊員が内部への進入を試みましたが、濃煙と熱気で、中の状況すら判明しませんでした。これほどの大規模火災は我々の管内では初めてです」

結局、出火から丸6日が経ち、ほぼすべての荷物を焼き尽くす形でようやく火災は収まった。22日に現地を訪れた同社社長の岩田彰一郎氏(66歳)に聞いた。

「本当に地域のたくさんの方にご迷惑をおかけして、今日、ご挨拶をさせていただいたんですけども、もう一方で地域の雇用も担っていますので、そういう方々も含めて、きちんと(倉庫を)再建していくのが我々の責任と思っております。

まずは後日になりますが、地域の方々に向けて説明会を開きまして、お詫びさせていただくのが第一だと考えています」

なぜここまで消火が難航したのか。地元消防隊の能力を超えた火災だったことが原因の一つに挙げられる。元消防官で防災アナリストの金子富夫氏が解説する。

「糸魚川の大規模火災の現場に行ったときも痛感しましたが、地方はこれほどの規模の火災を想定しておらず、消防体制や装備が整っていないことが問題です。東京消防庁だったら、初期段階で最低でも70隊くらい投入して、6日もかからずに消し止められていた可能性が高いでしょう。

もう一つは、倉庫の構造の問題です。スプリンクラーは設置してあったはずですが、70度を超える温度を感知しないと作動しないんです。倉庫は天井が高く、スプリンクラーが作動する前に横へ延焼してしまった可能性もあります」

専門家も地元住民も一様に疑問視するのが、「出火原因」だ。当初は従業員のタバコの火の不始末を疑う見方もあったが、岩田社長は会見で喫煙区域は火元から離れていたと主張した。前出の広報担当者もこう答える。

「(火災の原因は)憶測となるので現段階では申し上げられないのですが、考えられるすべての可能性をこれから検証していくことになります。

(物流センターで働く)労働者は直接雇用ではないので、(どういった人間が働いていたのかという)現状把握はできておりません。基本的には子会社の物流会社が庫内の運営をしていました。その中で社員とか派遣とか業務委託とか、作業員が400名程度いたと聞いています」

焼け落ちたアスクルの物流センターは、首都圏と東日本への配送の基幹となる「心臓部」だった。

アスクルはオリックス不動産から土地46億8000万円、建物105億7000万円、合計152億5000万円で買い取り、50億円近くを投資して設備を整え、'13年からこの巨大倉庫を稼働させた。

「宅配ビジネスにとって戦略的に最も重要なのは物流センターで、これがないと商品を消費者に供給できません。しかも今回の物流センターは首都圏を担当するという、数あるセンターの中でも最も重要な役割を担う場所でした。それが火災で使えなくなるばかりか、新たに建て直さないといけないとなると、また投資が必要となります。

当然、火災保険などには加入しているでしょうが、新たな投資負担が発生することは間違いありません」(流通アナリストでプリモリサーチジャパン代表の鈴木孝之氏)

今の時代、物流各社の倉庫はどんどん巨大化している。そこに莫大な商品が集約して保管され、おびただしい数が毎日出荷されていく。それが火災によってすべて灰になってしまった。

この損害はどれほどなのか。

経営コンサルタントの加谷珪一氏が概算する。

「自社所有だった倉庫を再建すると約100億円かかり、焼失在庫は推定20億~25億円になるでしょう。火災前のアスクルの今期決算の業績予想は経常利益が95億円なので、1期分の利益がすべて吹き飛ぶ計算です」

金銭的な被害に留まらない。埼玉の物流センターから発送予定だった商品はすべてキャンセルとなり、顧客からの信用失墜がもたらす長期的なダメージは計り知れない。