生産性を上げるカード、「ダイバーシティ」

そのうえで、1つの有力な方法が、ダイバーシティを生かすことだ。

「一人ですべてをカバーする」。おそらく、これが多くの日本の業界で、美徳とされてきた。病院における主治医制度、マスコミの番記者、そして、営業ほかあらゆる顧客の担当。相手との信頼関係を築くうえでは、それがただの「美徳」ではなく合理的であった面もあるだろう。個人としては、自分しかできない仕事を増やすことで評価を勝ち得る戦略でもある。

しかし、これはもう見直さざるを得ない。第一に、労働人口減少は避けられない事実で、制約を抱える働き手も増えていく。一方でカバーしなければいけない事象はおそらくますます複雑化しており、1人1担当制には限界がある。

次に、日本の「総合職」は、定期的に異動を繰り返しながら担当制を敷き、すべての業務を1人でやることが多い。癒着を防ぐなどの効果があるのだろうが、これは担当が変わるたびに個人が時間をかけてキャッチアップすることに頼りすぎている。

人事経済学では、色々な分野が平均的にできるジェネラリストで構成されたチームよりも、ある特定分野に抜きんでた人たちがチームになってモノを作ったほうが価値が上がるという研究結果がある。異なる才能や異なる経験を持つメンバーが、必ずしも自分がしなくてもいい作業はせずにもっと得意な人に任せながら、自分にしか持てない視点が生かせる場所に最も時間を使う、補い合い、教え合うというほうが格段に生産性は上がる。

第三に、新しい価値を生み出していくには、今後個人の中のダイバーシティを高めること、つまり仕事をしている以外の時間での家庭、地域、あるいは副業での経験や視点が価値になってくる。

生産性を上げようとする動きの中で、人事権を持つ人や、KPIを管理する経営層に、絶対にやらないでほしいことがある。短時間で成果を出せる部署がでてきたときに、「もっと人少なくても行けそうだな」と人を減らすこと。そして「その生産性で長時間やってよ」と目標を増やすこと。何もしなくてもいいからそれだけはやめてほしい。その判断は、確実に現場の管理職を潰し、あなたの会社を潰す。

こうした観点から結局ダイバーシティを生かせる組織が、制約のある人材を生かすことができ、人材を集め、おそらく働き方革命が起こりつつある世界で勝ち残っていく。だから、働き方改革とダイバーシティは表裏一体なのだ。