ミクロで負けても、マクロで勝つために

こうなったときに、長時間労働という勝負の仕方をしていた人たちは、それによって実際に成果を上げていた人も含めて、否応なくにもいかに短い時間で成果をあげるかという方向にシフトせざるをえなくなる。そのときに、いかに価値を上げられるか。短い時間でも変わらぬ成果を、あるいはそれ以上の成果を上げられるかが問われる。

現場の社員、あるいは管理職から見れば、「うちの会社はそう簡単に変わらない」「働き方改革なんてナンセンス。だってそれじゃ勝てるわけがない」と思うかもしれない。たとえば、新聞記者や営業の夜討ち朝駆け。今日、自分が行かなかったら。他社は行っているかもしれない。それで商談やスクープのネタが取れない恐怖を現場は抱えている。

私自身も新聞記者時代に夜討ち朝駆けをして、朝5時台に家を出て、深夜22時ごろから取材を終えた記者たちで集まって飲み食いをしながら翌朝の作戦会議を立てるという働き方をしていた時期があった。ニュースを追いかけているときはそれが楽しかった面もあるが、高層マンションで捕まえづらい経営者が増え、自分自身も妊娠や出産を経験する中で、そのやり方では成立しなくなっていくことも実感していた。

これに加え、新聞社について言えば、多くの人がネットでニュースを読むようになり、そもそも「午後には発表されるネタをその日の朝刊で先んじて書くことで勝負がつくと思っているのは業界内の人だけ」という世界にもなりつつあった。

取材先や読者の行動や判断軸が変わる中で、旧来型のやり方ではなく携帯電話に出てもらえるような信頼関係をいかに築くか、あるいは長期目線でいかに読んで価値があると思われる記事を書けるか。ここでも勝負の基準は大きく変わりつつある。

このように勝負の基準が変わる過渡期は、経営レベルでも個人の行動レベルでも闘い方を判断するのが非常に難しい。しかし、いま起こっていることは、古い基準で勝負がつくミクロレベルにおいては負けることがあるかもしれない覚悟を持ちつつ、新しい基準にあわせた改革をいち早く実行できた会社が、人材をかっさらっていっているという現実だ。

ミクロレベルで今のやり方を変えるのを躊躇している会社は、マクロで長期で見たときに確実に負ける。人材が流出し、入らない。そして短時間での価値の出し方にシフトできていない。

ミクロで完全には負けないようにしながら、マクロの変化に備える必要がある。つまり、大富豪で言えば、2が一番強い世界でまだ勝負をしながらも、「革命」が起こることがかなりの確度で分かっているわけなのでそれに備えるべきなのだ。

ある日「その瞬間」がきたときから「3、4、5」カードを集め始めたら、あなたもあなたの会社も負けてしまう。長時間カードばかり集めてきた組織は、今から生産性カードを集めないといけない。