香港トップは誰になるのか? 返還から20年、ここが大きな分岐点だ

番狂わせか、香港の「中国化」か
野嶋 剛 プロフィール

習近平は曽俊華を支持?

また、注目しておくべきは、中国内部の権力闘争の影響である。共産党のなかでも、香港に対しては、長く江沢民系統が影響力を持ってきたというのは、周知の事実であった。それは香港返還が行われた1997年には、鄧小平はすでに亡く、江沢民が当時の最高指導者であったことと関係している。胡錦濤時代になってもなかなか江沢民派の牙城は崩されなかった。

だが、ここにきて、習近平の江沢民派に対する攻撃が激しさを増していくなかで、江沢民が支持するのは林鄭月娥かもしれないが、習近平が支持するのは曽俊華ではないかという憶測も流れている。

photo by gettyimages

雨傘運動でクローズアップされた香港人の反中感情は、いまもなおくすぶっており、いつ爆発してもおかしくない。今回の選挙にも、民主化だけでなく、香港のいわゆる「本土派」と呼ばれる雨傘世代の勢力は、候補者を出すことはできず、政治参加が果たされないストレスは市民の間に根強い。

 

実際の投票は秘密投票で行われるため、票読みは最後にふたを開けるまでわからない。林鄭月娥が、不人気の象徴だった梁行政長官の前回得票数「689票」をどこまで上回るかどうか。それによって、香港における親中派の結束力が測れる、という選挙の見方もあるだろう。

香港政治は岐路にある。その点については、誰も異論がないところだ。今回、林鄭月娥が圧勝すれば香港の「中国化」、あるいは一国二制度の形骸化がますます進むはずだろう。だが、曽俊華の善戦、あるいは番狂わせの勝利がもし起きれれば、香港は香港であり続けるうえで一筋の光明がさすかもしれない。

国力において圧倒的な中国・日本との関係を深化させる台湾。日中台の複雑な三角関係を波乱の歴史、台湾の社会・政治状況から解き明かし、日本の進路を提言。http://amzn.to/2lRSpFM