PPAPにマリカー…最近、知財のトラブルが増えているのはなぜ?

「森のくまさん」騒動もありました
稲穂 健市 プロフィール

お笑い芸人のパーマ大佐が童謡「森のくまさん」に独自の歌詞や旋律を追加し、それがCDなどで販売されていたことに対して訳詞者の馬場祥弘氏が抗議をしたのは、著作者人格権を根拠としたものだ(2月1日に円満解決となっている)。

また、公表された著作物であれば「引用」して利用することができるが、「報道、批評、研究などのための正当な範囲内であること」が必要とされているため、「森のくまさん」のケースはあてはまらないだろう。

ネットに溢れる「まとめサイト」も「引用」の要件を満たしていないと指摘されるものが多い。雑誌「アサヒカメラ」2月号が「写真を無断使用する“泥棒”を追い込むための損害賠償&削除要請マニュアル」を掲載したところ大反響を巻き起こし、翌3月号にも異例の再掲載がなされた。頭を抱えている写真家が多いことの現れだろう。

「PPAP」を商標出願していた元弁理士

ここまで読んだだけでも、著作権の複雑さがおわかりいただけると思うが、前述したように、知的財産権は著作権だけに限られない。その中でも特に商標権については、一般の方々が誤解していると思われる点も多いので、以下、少し説明しておこう。

今年1月下旬、「PPAP」や「ペンパイナッポーアッポーペン」の商標を出願した元弁理士・上田育弘氏に注目が集まった。上田氏は本人名義と会社名義の双方を使って、2014年頃から大量に商標を出願しており、知財業界では以前からかなりの有名人であった。

 

昨年4月、私は上田氏の狙いを探るべく、本人にコンタクトを試みた。すると、結構な額の「コメント作成手数料」を事前に支払うよう求められたのである(結局、本人にコメント作成は依頼しなかった……)。

フジテレビ系の情報番組「とくダネ」の取材班に対して同氏は「取材料もらえる? 5万円。1時間くらいでええ」と要求しているので、金額の設定方法はけっこうアバウトなようだ。この取材で上田氏がまったく悪びれた様子を見せなかったことから、同氏に対する批判が拡大したことについては説明するまでもないだろう。

だが、ここで注意すべきは、商標とは、そもそも商品・サービスに付ける「他人の商品・サービスと区別するための目印」であり、著作物などのような「創作物」ではなく、「選択物」であると考えられている点である。こう書くと、「SONYやPanasonicは造語だから、『創作物』なのでは?」と指摘される方もいるかもしれない。

しかし、商標の考え方では、無限に存在する文字や図形などを選択肢として、その中から「選択しているにすぎない」と位置づけられている。

そのため、たとえ他人が考え出したネーミングやフレーズであっても、すでに他人がそれを商売として使って広く知られている、他人の業務と出所混同のおそれがある、公序良俗に反する(様々な局面で適用される)、などの商標法で規定される「登録NG」のいずれの要件にも引っかからなければ、「早く出願した者順」のルールによって登録が可能となる。必ずしも「登録NG」となるわけではないのだ。

上田氏は自信満々な態度で、「商標には特にね。人のものを盗む「冒認」という概念がないんですよ」「出願日で私が勝っていますから」(「とくダネ」より)などと発言していたが、商標の本質を考えると、同氏が滅茶苦茶なことを言っているわけでもない。

とは言いながらも、上田氏はほとんどの出願について出願料を支払っていないので、却下処分を受ける可能性が高いし、仮に出願料を支払ったところで「PPAP」の出願は、「登録NG」のいずれかの要件に引っかかりそうだ。

また、仮に登録されたとしても、マスコミなどが指摘していたように、「ピコ太郎さんがPPAPを歌えなくなる」ということはない。

というのも、他人の商標権侵害となるには、①その他人の登録商標と同一・類似の商標を、②その登録で指定されている商品・サービスと同一・類似の商品・サービスについて、③商標として使用する、ことが要件となるからである。つまり、単に歌を歌うくらいでは、基本的には商標権侵害とはならないということだ。