原発利権に斬りこめ! 知られざる「国税局内偵班」の戦い

「最後の砦」はあきらめが悪い
上田二郎

国税は手ぐすね引いてFXの申告を待っている

内偵班は査察第1~17部門に配属されているが、内偵の一切を取り仕切るのは査察総括第一課だ。統括官を飛び超えての直訴はご法度だが、人事異動が近づいていたため、統括官に遠慮しなくても良い時期に差し掛かっていた。

そして、統括官は年齢的に今回が最後の人事異動で、マルサに再び戻ってくることはないと分かっていたことも、事案が日の目を見た大きな原因だ。検討会を通過するにはある程度のツキも必要なのだ。

畠中チーフ  「概略は以上です。いかがでしょうか?」
総括一課長  「難しい事案を良くここまで解明したね。しかし、実施を説得するのは難しいだろうな。バックしたカネは更に川上の会社(元請け)に戻されるのだろうが、誰がどうやって運ぶのかが分かっていない」

畠中チーフ  「しかし、元請けにカネが戻ると会社に出入りする全ての人間をマークしなければなりません」

総括一課長  「そうだろうね。しかし、そこが分からず強制調査に入っても、解明できなければ調査展開ができない。説得は難しいだろうな」

上田     「やはり無理ですか……」

総括一課長  「とりあえず内偵調査報告書を書いてみな。検討会で実施がどんな反応をするのか? どんな補完調査をしたら着手してくれるのか? などを聞いてみるのも一手だ。面白い事案であることは間違いない」

 

こうして「原発から流れ出すカネ」を解明する道が開けていったのだ――。

このほか、『国税局査察部24時』では、マルサが初めて強制調査に着手したFX事案を掲載し、当時、法定調書の提出義務がなかったFXをどのように取り締まっていったのかも明かしている。

昨年はブレグジットやトランプ大統領の当選によって為替相場が大きく動いたため、国税は手ぐすね引いてFXの申告を待っている。

FXは儲けた場合の申告は当然だが、損した場合の確定申告が重要なことはあまり知られていない。

申告期限が3月15日に迫っている。期限前に是非、ご一読いただきたい。

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上田 二郎
1964年生まれ。東京都出身の税理士(上田二郎は筆名)。83年、東京国税局採用。千葉県内および東京都内の税務署勤務を経て、88年に東京国税局査察部に配属。その後、2007年に千葉県内の税務署の統括国税調査官として配属されるまでの合計17年間(途中、2年間の税務署勤務をはさむ)を、マルサの内偵調査部門で勤務した。09年、東京国税局を退職したが、再び税理士として税務の世界につながっている。著書に『マルサの視界 国税局査察部の内偵調査』(法令出版)、『国税局直轄 トクチョウの事件簿』(ダイヤモンド社)、『税理士の坊さんが書いた宗教法人の税務と会計入門』(国書刊行会)がある。