原発利権に斬りこめ! 知られざる「国税局内偵班」の戦い

「最後の砦」はあきらめが悪い
上田二郎

査察総括第一課長への直訴

畠中チーフ 「下請け会社に架空外注費を払ってバックさせていることは間違いないのですが、カネが戻ってしまうとそこから先が見えません」

統括官   「もうやめろ! この事案は無理だ。実施が受けない。カネが川上(元請会社)に戻ってしまえばタマリはない」

担当統括官はマルサ歴25年を超えるベテランで実施班の経験もあった。

上田    「こんな脱税をみすみす見逃すのですか? 税務署の過去の調査では解明できていません。マルサ以外に調査できる部署はありません」

統括官   「そうは言っても実施は受けない。脱税ではあるが、所詮は会社から流出した(使っている)カネだ。マルサが狙う私腹を肥やしたヤツとは本質的に違う」

上田    「そうですがカネをもらっているヤツがいるわけですよね。強制調査に入れば、そこにたどり着けるかもしれません」

統括官   「『かもしれない』事案を誰がやるんだ? かもしれない事案に何人の査察官を投入するんだ? 結果的に分からなかったらどうするんだ!」

統括官の言い分はごもっとも。だが――。

 

上田    「原発利権に絡む裏金なら面白い方々を焙り出せるかもしれません」

統括官   「査察官ごときが考えるような話ではない。やめろと言ったらやめろ!」

統括官にこれだけ反対されれば、引き下がらざるを得ない。この日は部門全員の応援をもらって3回目の徹夜の張り込みを終え、国税局に戻ってきた。

上田    「どうしても納得がいきません。架空取引は間違いありませんので、何とか強制調査に結び付けられませんか?」

畠中チーフ 「あれだけ反対されるとな……。統括は実施班の経験もあるし、実施が受けないと言っている話も分かる」

上田    「せめて内偵調査報告書だけでも書かせてください。検討会にかければ
チャンスがあるかもしれません」

畠中チーフ 「一課長(いっかちょう:査察総括第一課長)に相談してみるか?」

上田    「直訴ですか? 統括にはどのように説明します?」

畠中チーフ 「黙っている。統括はどうせ7月10日で転勤だ。一課長から許可さえ
貰えば何を言われても知らんぷりだ!」