「巨人・小林は正捕手の器ではない」江夏豊の言葉の真意

【プロ野球特別読み物】 器とは何なのか
週刊現代 プロフィール

ヤクルトの黄金時代を築いた名遊撃手・宮本慎也氏とかねてから親交がある株式会社マネースクウェア・ジャパンの創業者、山本久敏・取締役ファウンダー(57歳)は、ビジネスマンの視点から、身近に見てきた野球選手の「器」についてこう語る。

「野球選手は、プロに入っている時点でみな能力は十分、認められている人たちの集まりです。

特に正捕手、エース、4番はチームの要です。私の中での正捕手は野村克也さん、エースはどんな時も淡々と投げた野茂英雄さん、4番は不動で勝負強い松井秀喜さんのイメージが強いです。

その方たちの共通点は野球だけではない、人間としての『器』の大きさを感じさせることです。たとえば野村さんは、攻守の要として数歩先を見る気配りを大切にされ、監督時代のミーティングも、野球よりも政治や経済の話が多かった、と聞きました。野球人の前に社会人たれ、ということだと思います。

また私がお付き合いさせていただいている宮本さんも、自分のことだけでなく、チームや仲間のことに目を向ける視野の広さがある。ヤクルトの選手らと一緒にゴルフをする機会がありましたが、ラウンド中、宮本さんが後輩たちに『こんな本読むといいぞ』とアドバイスしていたのが印象的でした」

2014年に入団した小林は広島の名門・広陵高で野村祐輔(現・広島)とバッテリーを組み、夏の甲子園で準優勝。その後、同志社大-日本生命と野球界のエリートコースをすすんだ。

そのプライドがあったのか、入団当初はあまり周囲の選手とコミュニケーションをとらなかった。本来であれば、自ら投手陣に近づいてコミュニケーションをとり、それが強固なバッテリー間の絆を生み出す源になるが、入団直後の小林はうまく自分をさらけ出せなかった。

当時、正捕手だった阿部が「(捕手なのに)どうして何も質問にこないんだ」と愚痴をこぼしたほどだ。

 

打たれ強いか

野村氏は言う。

「チーム事情もある。巨人の投手は捕手に関係なく、いい投球をする者が多い。打者が直球を狙っているのがわかっていて(それを上回る威力を持つため)直球のサインを出していい好投手と組んだら捕手は成長できない。

私は一流の投手を受けているときは少しも楽しくなかったね。小林を見ていると、対戦相手の打者分析がきちんとできていないと思ったな。

じつは配球には万人に共通した〝原点〟があるんだけど、それを小林が知っているか、聞いてみたい」

前出の山本氏が続ける。

「ビジネスマンの『器』とは仕事で磨かれながらできるものだと思います。大黒柱になりそうな『器』をもった候補者は何人かいますが、共通しているのは打たれ強いことです。

私の場合、仕事における対価は、仕事だと思っています。ビジネスマンは情熱を傾けられる仕事があることそのものが素晴らしいことでないほうが辛い。一度任せた仕事がよくできたら、さらに重要な仕事を任せる。それを繰り返すことでその人自身の器も大きくなるのです。

今まで数多く面接してきた中で、やる気満々で頭脳明晰で人格も素晴らしかったのに、結局辞めてしまった人もいます。器量があるかないかは仕事を任せてみないと分かりません」

「器でない人間」を不相応なポジションに据えると、組織にとっても、本人にとっても不幸が待つ。小林は批判を受け入れ、自分を磨き、器にふさわしい選手に成長できるだろうか。

「週刊現代」2017年3月4日号より