プリプリの名曲『M』、今だから明かせる誕生秘話

バブル絶頂期に生まれた珠玉のバラード
週刊現代 プロフィール

河合 すごく普遍的な詞である一方で、すべてが誰でも分かるように書かれていない。どこか〝余白〟があるのも良い。

笹路 「星が森へ帰るように」という一節とかね。星という言葉が出てくることで、曲のスケールが大きくなる。

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富田 私の実家の向かいに大きな公園があって、桜の木が並んでいたんです。それで、夜から朝まで机に向かって詞を書いていると、さっきまで天にあった星が、いつの間にか森の向こうに消えていた。そんなことを思い出しながら書いたんです。

河合 今は、「歌詞は分かりやすいほうがいい」って風潮もあるけれど、それだと面白くない。誤解も含めて、多少分かりにくさがあったほうがかえっていい歌に仕上がる。

富田 想像することが大事ですからね。

笹路 詞については他のメンバーもスタッフも、みんなこだわっていたね。当時、カナちゃんやキョンちゃんは詞ができると、FAXで香に送っていたけど、「こうじゃない」と突き返されることも、よくあったっけ(笑)。

河合 香はとりわけ歌いやすさを重視していましたから。たとえば、語尾が「い」だと伸ばしにくいからやめてくれ、とか。リズムに言葉がきちんと乗っているかどうか、すごくこだわっていた。

笹路 ようやく香がOKを出しても、今度はマイケルが厳しくチェックする番。スタジオのロビーで、マイケルが作詞担当のふたりを指導していた姿をよく覚えてますよ。

河合 そんなに厳しかったっけ? ただ、「Mって何なんだよ」と思った記憶がありますね。タイトルが『M』なのに、最初もらった歌詞の中にはまったく出てこないもんだから。

富田 マイケルさんに言われて、すぐに「消せないアドレス Mのページを」と付け足したんです。

笹路 この一文があるから、Mというのは別れた恋人のイニシャルだと分かる。女心がにじみ出ていて、良いんです。

河合 あと、これはすべての曲に言えることですが、僕が気をつけたのは10年、20年経っても色あせない作品を作るという意識を持つこと。時代ごとに「流行り言葉」はあるけれど、大半は時が経つと廃れてしまう。だから、そういう言葉は入れないように気をつけていた。

富田 当時みんなこぞって履いていた「リーボックのシューズ」という言葉を入れたいと言ったら、マイケルさんに「いつまでも流行が続くわけじゃない。よく考えろ」って怒られましたっけ。

 

「Mさん」の今

笹路 それにしても、作った当時は、この曲がこれほどの人気になるとは思いもよらなかったよ。シングルのA面にもならなかったし、プロモーションビデオも作らなかったのに。

富田 メンバーの間でも「いい曲だね」とは言っていたけれど、実はそれほど思い入れが深いわけじゃなかった。もちろん、私は大好きでしたけど、正直『M』の呪縛には悩んだこともありました。

河合 どんなアーティストでも新しい曲が出来たら、それを聴いてほしいものだけど、ライブでは『Diamonds』と『M』の2曲はやらざるをえないムードがあったよね。

笹路 曲が独り歩きしたパターンだね。プリプリも全部で100曲くらいあるけど、知られていないものも多い。

富田 もっといろんな曲を聴かせたいのに、どこに行っても「『M』は?」と言われるから、正直演奏するのが嫌になったこともありました。「わざとやらないようにしようか」なんてメンバーと話したりもして。

河合 やっぱりライブで聴いて好きになる人が多いんだよ、『M』は。プリプリは激しい曲が多いけど、バラードだから歌詞も聞き取りやすい。

富田 でもこの曲、演奏が難しいんですよ。ピアノのイントロから始まって、歌が入ってベースが入って、最後にドラムとギターが加わるんですけど、それぞれタイミングの取り方が難しい