【東芝問題】社員19万人の巨大企業はなぜこんなことになったのか

決算延期の舞台裏を語り尽くす
週刊現代 プロフィール

シャープに似てきた

小野 事業を切り売りするのは債務超過を逃れるためで、その裏には東芝に融資している銀行側の意向も働いています。銀行が一番避けたいのは債権カット。みずからが傷を負わないためには、東芝に綱渡りでもいいから資金繰りをつけて欲しい。

その点、半導体子会社の株を5割売却すれば1兆円規模の巨額資金が入ってくる可能性があり、債務超過状態から一気に脱せられるので、銀行には非常に都合がいい。

磯山 事業の切り売りで一番得をするのは、バランスシートを改善したいインセンティブの強い銀行なわけです。昨年の春頃から東芝は実質的に銀行管理状態で、もはやリーダーシップを取れる経営陣がいなくなっているとも言えます。

竹内 経営危機状態にあった当時のシャープと同じ状態ですね。

小野 しかも、当の銀行の人間からすると、「俺が東芝担当のうちは、潰さない」「俺はここを乗り越えれば役員になれる」という力学が働いたりもするわけです。目下の苦境を乗りきることさえできれば、5年後のことは知らないと……。

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ここで2月14日の会見当日に話を戻すと、懸案の米国原発子会社のウェスチングハウス社(WH)をめぐって、内部通報で「内部統制の不備」を示唆する疑惑が急浮上してきたとの発表があり、驚きました。粉飾決算を受けて内部統制改革をしていた東芝だけに、記者席からも「またか」「なにも変わっていない」とため息が漏れていた。

磯山 東芝は対策として、今後は原発事業を社長直轄で監視していくと言っていますが、果たしてそんな小手先の対策になんの意味があるのでしょうか。

そもそも、WHをめぐって7000億円超の巨額損失が発生しているのは、綱川社長をはじめとする東京本社の経営陣がWHをしっかり監視できなかったことが原因なわけです。東芝経営陣は、WHに対して想像を絶するほどにマネジメントができていない。

竹内 東芝にいた当時から、一人の社長があれだけ分野の違う事業をすべて見る、総合電機メーカーというあり方自体に無理があると思っていました。

というのも、たとえば私のように技術系で東芝に入社して半導体部門に配属されると、以降はずっと半導体一筋の会社員生活です。他部門とは人の入れ替えもなければ、働く場所も違うので、なにをやっているのかもわからない。

綱川社長もメディカル部門出身なので、おそらく原発の専門的なことはわからないと思いますし、難しい技術議論になれば反論もできないでしょう。

WHをどうするのか

磯山 今回の巨額損失の原因にしても、WHが原発建設会社ストーン・アンド・ウェブスター社(S&W)を買収したことにあるわけですが、一年で数千億円のカネが消えていくような会社を買うというのは正気の沙汰ではない。

東芝やWHの役員たちは中身を十分に精査できていなかったか、ハメられてババを摑まされた可能性すらあるわけです。しかも、S&Wを買収したのは東芝が粉飾決算騒動で揺れていた時期。旧経営陣らが一斉退任する「権力の空白期」で、最悪の案件を摑まされたようなものです。

竹内 そもそも、東芝の経営がおかしくなってきた源流を辿ると、経営者がスポットライトを浴びだした時期から変になってきているように感じます。

東芝はもともと現場からのボトムアップの会社で、現場で開発した製品を10年、20年という長い時間を掛けて主力事業に育てていく会社だったと思います。現在、稼ぎ頭となっているフラッシュメモリもそうです。

会長や社長は、言い方は悪いですが「よきにはからえ」という感じで、地味で真面目な現場の人が、コツコツと仕事を回していく会社でした。

それが、いつしかトップダウンで「やるぞ!」という社風に変わってしまい、経営者もメディアでもてはやされるようにもなったのではないか。後付けではありますが、WH買収時も、「英断」などと経営陣が持ち上げられました。その頃から、経営の歯車が狂い始めたのではないでしょうか。

小野 そうしたマネジメント不在が最悪の形で火を噴いているのが、海外原発事業ということ。原発畑出身の志賀重範会長ですら、WHの内部事情を把握しきれず、このほど責任をとって辞任することになった。

ですからもはや、WHは「チャプター11」と呼ばれる米連邦破産法11条を適用する、つまりは倒産処理したほうがいいと思います。

このまま東芝が保有し続ければ、新たな巨額損失が発生するリスクも十分にあります。綱川社長はWHの株を売却する意思も見せているが、どんな爆弾が隠れているかわからない会社を買おうという会社が出てくるとも思えません。

 

磯山 実際、東芝社内の現場社員も危機感が高まっていて、原発部門で働く30代の若手社員が会社を去り始めています。ただ、WHを処理するとなれば、問題はトランプ大統領でしょうね。WHを倒産させれば米国の雇用状況を悪化させるので、なにを言ってくるかわからない。

それに、日米原子力協定や安保問題も絡んできます。やはり、原発事業が「官業」であるということが東芝の経営判断の足枷になってしまっている感は否めない。

小野 逆に言えば、東芝経営陣には、原発をやっているから国は東芝を潰さないという甘えもあったでしょう。とはいえ、いま日本政策投資銀行など政府系金融機関の動きを見ていると、東芝を助けようという兆候は見られません。

磯山 私も政府や経済産業省の人たちに話を聞いていますが、「原発は大事だけれど、東芝という会社を残すかどうかは別問題」と言い出しています。

仮に東芝の原発事業を延命させるために税金を投入したとすれば、その血税が米国の原発事業の追加コストに消えてしまう可能性があるので、そのような政治決断は簡単にはできないわけです。

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