日テレ『イッテQ』はなぜここまで強いのか? その緻密な戦略と計算

お化け番組の舞台裏を探る
週刊現代 プロフィール

日テレは企画力で勝負するのが伝統。だが、キャスティングにも深い考えがある。

「日曜夜に起用するタレントさんの第一条件は不快感がないことです。誰とは言えませんが、たとえ人気があっても、嫌悪感を少しでも持たれるようなクセが強いお笑い芸人が出ることはない。

お試しで出演してもらうことはありますが、その際の毎分視聴率が下がる、特に女性の視聴率が下がるともう頼まない。芸人としての面白さと、日曜夜に視聴者に受け入れられるかは別の問題です。

『イッテQ』にはベッキーがレギュラー出演し、不倫発覚後に降板しました。彼女を復帰させることが難しいのは、視聴者がファミリー層だからです」(日本テレビ関係者)

その一方で、『イッテQ』では、イモトや宮川大輔をはじめ、当時まだ無名だったタレントを積極的に起用してきた。

「それはアフリカやヨーロッパなどへの長期にわたる海外ロケを引き受けてくれるからですよ。人気タレントだとそれはなかなか難しい。

ブレイク前のタレントならば、たとえばスカイダイビングなどの過酷なロケにも自発的に取り組んでくれますし、ミッションが達成できなければ、『これじゃあ帰れない』と自らの意志で再挑戦してくれる。

そうすると、いわゆる『タレントいじめ』にならないので、視聴者側にも不快感はなく、むしろ出演者の行動に共感してもらえるんです。

現地で蛇などゲテモノを食べる場面もありますが、これもタレントに無理やりやらせる『罰ゲーム』ではない。現地の食文化を紹介するためにやるので、視聴者も受けいれてくれるんです」(前出・日テレ関係者)

 

『イッテQ』の名物企画と言えば、「登山」である。イモトアヤコはこれまで、キリマンジャロ、モンブラン、マッターホルン、マッキンリーといった世界最高峰の山々の登頂を成功させている。

本気で悔しがるイモトがいい

元毎日放送プロデューサーで同志社女子大学教授の影山貴彦氏が語る。

「'14年に放送されたイモトさんのエベレストへの挑戦は忘れられないですね。

結果としては、途中で登頂を断念せざるを得なかったわけですが、あのときイモトさんの悔しがり方は本物でした。登頂できなかったことで、よりリアリティがありましたし、なんとも言えない感動を覚えました。

『イッテQ』はバラエティを装いながら、中身は大いに感動を伴うドキュメンタリーになっている。いま主流のお手軽なバラエティではなく、徹底的に中身にこだわっているように視聴者には映ります。これが大きいでしょう。テレビが効率を求めがちなところに、その逆を行っているんです」

この「ドキュメントバラエティ」こそが、日テレの真骨頂である。'90年代に大人気を博した同局の『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』や『電波少年』の「毒素」を抜いて、ファミリー向けに進化したものが、『イッテQ』だと言えるだろう。

前出の岩崎氏は、日テレは日曜夜の「視聴気分」を捉えていると指摘する。

「日曜日の夜は何も考えたくない、とにかくスカッとしたいんです。その点で、『イッテQ』は深く考えずに楽しめる。『フルタチさん』はその時間帯にしては情報の見せ方が重すぎるのかもしれません。

『イッテQ』には笑いに加えて、感動、努力、挫折といったドラマ要素が組み込まれています。これがお笑いだけになってしまうと、ターゲット世代が狭くなってしまうんです。

『イッテQ』はもちろん、『24時間テレビ』のマラソンもそうですが、出演者に頑張ってもらう企画が、日テレのDNAかもしれません。高いハードルを設定すると、それを超えた先に出演者もスタッフも予想していなかった展開が待っていたりする。

海外でヒッチハイクを行った『電波少年』もまさにそうだったと思います。それが日テレの真髄であるドキュメント的なバラエティーにつながっているんだと思います」