アメリカが進める金正恩政権「転覆計画」の全貌

正男暗殺の引き金はこれだった
近藤 大介 プロフィール

その時、習近平は

トランプ政権が考える「金正恩政権転覆」と「次のトップ擁立」は、大変重要な問題なので、それぞれ分けて考えてみたい。

まず、トランプ政権が金正恩政権の転覆を検討した場合、最も重要な作業は、長年にわたる「北朝鮮の後見人」中国を、いかに説得するかということだ。

実は一度、アメリカから中国に、金正恩政権の転覆を持ちかけたことがある。'13年12月4日、北京の人民大会堂で習近平主席と5時間半も会談したバイデン副大統領が、こう提案したのだ。

「あの北朝鮮の若い指導者(金正恩)は、もうもたないのではないか? そろそろ米中両国で、北朝鮮の現体制崩壊後の統治の仕方について話し合おうではないか」

この時、習近平主席は、バイデン副大統領の突飛な提案を聞いて、驚いてしまった。それまで中国内部で、金正恩政権崩壊後のシナリオについて話し合ったことなど、一度もなかったからだ。

そこで「引き続き様子を見よう」と言って、お茶を濁したのだった。

この時、アメリカは、まもなく金正恩が、北朝鮮ナンバー2の張成沢・朝鮮労働党行政部長を処刑するという、政権最大の賭けに出ることを見通していた。実際にそれからわずか8日後に、張成沢は処刑された。だが習近平主席には、そこまで詳細な情報は報告されていなかった。

バイデン副大統領は威勢よく提案したものの、オバマ大統領には、北朝鮮と一戦交える覚悟はなかった。'13年8月に、ようやくシリアを空爆すると決断した時にも、議会の承認を得てからと躊躇したほどだった。

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だが、トランプ大統領は違う。外務省関係者が語る。

「トランプ大統領の政治を一言で言えば、『雇用ナショナリズム』だ。アメリカ国内の雇用を増やすためなら何でもやる。

軍需産業の雇用を増やすには、中東のIS(イスラム国)と東アジアの金正恩政権を滅ぼす行動を起こすのが、一番手っ取り早い。それぞれ周辺国に多額の武器輸出もできるからだ。

北朝鮮に関しては、史上最大規模の米韓合同軍事演習を、3月に予定している。いつでも『実戦』に移せる演習だ」