一方で、もちろん普通の若者らしさもある。
「ゴルフ以外の趣味は野球でしょうね。トレーニングも兼ねてキャッチボールもよくしています。利き手ではない左投げでも鋭いボールを投げますよ。息抜きにマンガ雑誌を読みながら、グラビアを見て『このコ、好きなんだよね』と言っていたこともありました」(田辺氏)
松山に何度もインタビューしているノンフィクションライターの柳川悠二氏もこう明かす。
「スコットランドでインタビューしたときのことですが、息抜きにYouTubeでお笑いを見ているそうで、お笑い芸人『千鳥』の漫才『クセの凄い寿司屋』の物まねをした時は驚きましたね。
他にはカーアクション映画『ワイルド・スピード』シリーズがお気に入りで、字幕ナシで見ることもあるようです。メディアの前で英語を披露することはほとんどありませんが、リスニングはかなり上達しているはず。これは米ツアーを闘ううえで、大きなプラスでしょう」
フェニックスOPでは、現地の観客から「ヒデキー!」という声が数多くあがった。
その数は昨季とは比べものにならない。大会最終日は、米国内で視聴率約50%を誇るNFLのスーパーボウルが行われていたにもかかわらず、ゴルフ場に足を運んだゴルフファンたちが、松山に声援を送ったのだ。
「フェニックスOPでは、表彰式が終わった後、ギャラリーの子どもからサインボールをねだられて、サインした後、その子ではなく、あさっての方向に投げるフリをして子どもを驚かせて喜んでいましたね。
そういう茶目っ気もありますし、そうした一面が日本のゴルフファンの多くに知れ渡っていないのは残念ではありますね」(舩越氏)
フェニックスOPで優勝を決めた瞬間、松山には珍しく大きなガッツポーズを見せた。その理由をこう明かしている。
「(マネジャーの)ボブさんに『誕生日おめでとう』と、ここ(優勝グリーン)で言うため」
熱い心を持った日本人青年は、4月6日に開幕するマスターズで頂点に立つため、いまこの瞬間もゴルフのことを考えていることだろう。
「週刊現代」2017年2月25日号より