ドンキにヨドバシ…有名企業が「即配戦争」に続々参戦するのはなぜ?

そもそも、儲かる見込みはあるのか
加谷 珪一 プロフィール

ドン・キホーテも黙ってはいない

ネット通販各社の配送サービス競争は、今後、さらに激化しそうな状況だ。

ヨドバシに続いて、今度はディスカウント・ストア大手のドン・キホーテが最短58分で商品を配送するという驚くべきサービスを発表したからである。

新サービスの名称は、アマゾンのプライムナウにかけて「majica Premium Now」。同サービスは、専用サイトで注文した2000円以上の買い物について、最寄りの店舗から最短58分で配送するというもの。

対象エリアは店舗から半径約3キロ以内で750円の配送料がかかるが、2時間枠内での配送でよければエリアが半径5キロに広がり、配送料も無料となる。対象となる商品は約2500種類。とりあえず東京都大田区の「MEGAドン・キホーテ大森山王店」でサービスを開始し、順次、対象店舗を広げていく予定という。

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通販事業者が相次いで配送サービスを強化していることについて、一部からは、事業者側の負担が大きく持続不可能ではないかとの声も上がっている。確かにそのような面があることは否定できないが、筆者は少し違った見方をしている。 

これらの短時間配送や即日配送を多用する利用者は、一度にまとめ買いをするのではなく、毎日、必要な分だけ少量購入するパターンが多くなるだろう(ドン・キホーテも最近は生鮮食料品など通常のスーパーに近い商品ラインナップを増やしている)。

確かにこのままの状況では事業者側の負担は増える一方である。ヨドバシやアマゾン、ドンキの各社が運送事業者を使わず、自社の配達要員で対応していることからも負荷の大きさが分かる。

しかし、こうした小分けの購買が常態化すると、当然、事業者側もそれを前提にした配送体制を構築するようになるはずだ。ここで大きな役割を果たすのがAI(人工知能)である。

AIの技術を配送にフル活用すれば、不在の確率や最適な配送ルートの設定など、配送要員の動きを最適化することができる。これによって、配送要員がムダな動きをすることなく、小まめな配送を実現できる可能性が見えてくる。

都市部など地域は限定されるだろうが、日常的な短時間配送についても、AIの活用によって持続可能なサービスに仕立て上げることは不可能ではない。

 

配送業務の「オープン化」という選択肢

もっとも、最終的な配送業務の担い手が決まるまでには、いろいろと紆余曲折があるだろう。

選択肢は3つある。ひとつは、ヤマトや佐川といった既存の運送事業者が引き続き配送を担うというもの。

もうひとつは、アマゾンやヨドバシの短時間配送に代表されるように通販事業者が自前で配送網を整備するという方法。

最後は、シェアリング・エコノミーを活用して、配送業務を広く一般に開放するというやり方である。

AIなどITインフラを使って配送業務を最適化する場合、運んでいる荷物の中身やこれまでの購買履歴などビッグデータとセットにする方が望ましい。その点では、配送業者に業務を委託するよりも、ネット通販の事業者が自ら配送に乗り出した方がよいということになる。

だが、ネット通販各社がそれぞれに独自の配送網を構築していては、全体としてかなりのムダが発生することは確実である。

アマゾンはドローン(無人機)などを活用して、人に頼らない配送を実現しようとしているが、こうしたツールの利用にも限界がある。

業務の最適化という点では、配送事業者に委託してしまった方が効率はよいのだが、一方で、こうした貴重なビックデータを配送事業者にすべて渡すという選択肢も考えにくい。

ポテンシャルという部分で大きいのは、シェアリング・エコノミーによる配送事業のオープン化である。

従来型の配送インフラが確立していない中国では、配送要員を随時アプリで募集するシステムがすでにビジネスとして確立している。

配送業務のオープン化は、トラブルなどのリスクも増えるが、配送という業務を事実上、無制限に開放することができる。このシステムが本格的に導入された場合、配送業務に対する概念は180度変わってくるだろう。

ネット通販は、価格やポイントではなく、配送ルートや配送要員という、より根源的な部分での競争にシフトしつつある。ここを制した企業が次世代の覇権を握ることになるだろう。