「都議会のドン」内田茂、引退の真相〜本当に小池の勝ちなのか?

激震の都政・内幕レポート
鈴木 哲夫 プロフィール

引退は「決められたストーリー」?

さて、小池百合子東京都知事と都議会自民党のドン・内田茂都議の代理戦争として大きな注目を集めた、2月5日投開票の千代田区長選挙。結果は予想通り小池氏が推した現職の石川雅己氏が、内田氏が推した与謝野信氏にトリプル以上の差をつけて圧勝した。

「この選挙は石川さんが勝ったのではなく、小池さんが勝った選挙と表現していい」と石川陣営幹部が認めるほど、小池人気頼みの選挙であった。

元々75歳の石川氏には、多選批判や、長期政権による区議会との対立などがあったため、前回区長選挙では辛勝、今回もかなり厳しい戦いと見られていた。ところが、小池知事が石川氏についたことで、一転圧勝となったわけだ。

そして、いよいよ区長選が終われば「次は都議選。千代田区は内田さんの地盤。小池さんは候補を擁立して、内田さんの定数1を奪って自民党を潰すつもりだ」(同周辺)という展開が待っていた。

 

ところが、区長選挙の翌日。内田氏が選挙結果の責任を取り、次期都議選には出馬せずに政界引退を決めたという情報が駆け巡った。

そしてついに25日、内田氏は選挙区内で行われた会合に出席した後、ぶら下がり取材に応じ、不出馬を明らかにしたのだ。

ある都連関係者はこう打ち明けた。

「今回、区長選直後に引退表明するというのは、実は自民党の都連の一部の国会議員など幹部が、選挙前からそのタイミングを図っていた。第一義的には、内田さんは小池さんとのバトルに負けて身を引くんじゃない、あくまでも区長選の責任で引退するという形にして内田さんのメンツが立つようにしようというのです」

ところが、もっとしたたかに「二次的な効果」も狙っているというのだ。

「内田さんが都議選に出ないということになれば、小池さんは次の都議選で攻める最大の敵、いわば決戦の象徴を失うことになる。小池さんを敵失の状態にして、勢いをそぐという選挙戦略にもなる」(同)

そもそも自民党は、小池知事に対して、最近は対立路線ではなく「抱きつき作戦」という方向に転換しつつある。

たとえば、自民党都議会は来年度予算案でも小池知事の方針に賛成の意向を示すなどしている。今夏の都議選でも内田氏を消すことで対立軸をなくし、小池知事の追い風を弱めて、組織票のある自民党が有利に戦えるようにことを運ぼうとしている。つまり、内田氏の引退というカードを、小池対策として早めに使おうということだったのだ。

しかし、自らの引退が「政争の具」に利用された内田氏は何を思っているのだろうか。

実は内田氏の引退は、小池知事が彼を敵視しているからだとか、区長選の責任をとってだとかいう理由で出てきたものではない。今から2年前の夏に、すでに内田氏は当時の都連幹事長を辞め、次期都議選でも引退を意識していたのだ。

当時は都連執行部の人事が長く変わっていなかったので、そろそろ刷新を迫られている時期だった。都連会長は長く石原伸晃氏、そして幹事長は内田氏という体制だったが、これには理由があった。

当時東京都知事に君臨していた石原慎太郎氏に対して、都連は伸晃氏を会長に据え、いわば人質にしておくことで、コントロールしてきたのだ。それを幹事長職で仕切っていたのが内田氏というわけだ。しかし、慎太郎氏が知事を辞めたことで、もうその体制を維持しておく必要がなくなったのだった。

このとき内田氏は、周囲に「もう自分はやり切った。年も取ったし」と語り、幹事長には後継者として手塩にかけて育ててきた高島直樹都議を、そして、17年の都議選には出馬せず引退し、これも娘婿の千代田区議に譲ろうと決めていたのだった。