「都議会のドン」内田茂、引退の真相〜本当に小池の勝ちなのか?

激震の都政・内幕レポート
鈴木 哲夫 プロフィール

ドンと呼ばれるゆえん

内田氏の政治家としての「情」も見過ごされている。

昨年、舛添要一・前都知事が巻き起こした辞任劇。実は、内田氏が舛添氏を最後まで守っていたことはあまり知られていない。

都知事選で舛添氏を推した以上、自分に責任があるというのがその理由だったが、舛添氏が法律に反していないこともあり、舛添氏を守り通そうとしたのだ。

ところが、当時は参議院選の直前という時期であり、これ以上舛添問題を引き延ばすと参院選にも影響が出るうえ、舛添氏にとってもこれ以上評判を落とすと再起すらできなくなると判断。

大詰めの場面で密かに舛添氏に接触して、「自分一人、あなたを守ってきたがうまく行かない。俺に不信任を出させないでくれないか」と語り、誰の言うことも聞かなかった舛添氏はこれを受け入れた。

最後まで自分を守ってくれた内田氏に対して舛添氏は「もっと早くから内田さんに相談しておけばよかった」と周囲に語ったという。

そんな内田氏は、舛添氏に代わって知事になった小池知事の目の敵にされるとは思ってもいなかっただろう。メディアに追いかけられていたある日、内田氏は都連会長室に避難していた際にこうポツリと漏らした。

「ドンとか言われるけど、都民や都庁のためにやってるんだけどなあ」

 

彼は何を言いたかったのか。

東京という土地は無党派層が圧倒的に多く、また流動人口も多い。そのため、東京都知事選は人気投票となる傾向が強い。すると、1期4年でさっさと知事を辞めたり、人気だけで当選し、政治経験がないために思い付きの政策を掲げる知事が突然誕生したりもする。

昨日まで進められていた政策がいきなり取り止められたり、それまで善だったものが、一転悪になったりする。すると、都民も都庁も大混乱に陥る可能性がある――。

〔PHOTO〕gettyimages

だからこそ、内田氏はいち地方議員として、行政の継続性を貫くために、時には都知事と厳しく対峙し、時にはそれを取り込んできた。これは、地方議員の「矜持」と言えなくもない。

そこに価値観を見出している内田氏だからこそ、「決して上(国会議員や都知事など)を目指さない」(都庁OB)のだろう。

その結果、彼は東京で常に影響力を保持し、さらに実益をも左右する人物となった――。

これこそが「ドン」と呼ばれるゆえんだ。