2月14日、連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は今後の利上げに関して、「待ちすぎは賢明ではない」と発言した。これは、目先の利上げの可能性があることを多くの市場参加者に認識させた。
イエレン議長以外のFRB関係者からも、米国経済は好調であり今後数ヵ月の間に追加的な利上げは可能との見方が示されている。
一方、米国の金利上昇圧力は、今一つ高まっていない。利上げに前向きになりつつあるFRBに対して、市場参加者の多くは、利上げが可能かどうか判断しかねているようだ。
その背景にはトランプ政権の政策運営がどう進むかよくわからないという不透明感があるのだろう。先行き不透明感が意識されやすい中、FRBがどう政策を運営するか、先入観を排して考える必要がある。
1月の米雇用統計では、時間当たりの平均賃金の伸び率が前年同月比2.5%と、前月の2.8%から鈍化した。
この水準がエコノミストらの予想を下回ったことも重なり、市場では当面の利上げは遠のいたとの見方が広がった。その結果、金利先物市場では3月のFOMCでの利上げ確率が20%程度にまで低下し、「年内の利上げは2回」との見方が増えた。
そこで多くの市場参加者が、上院銀行委員会でのイエレン議長証言に注目した。
1月の時点でイエレン議長は、2019年末までに年2~3回ペースでの利上げが妥当との見方がFRB内で共有されていると述べていた。雇用統計を受けて議長が見解を修正し、より慎重な利上げへの考えが示されるのではないかと考える投資家は多かったようだ。
しかしイエレン議長は「待ちすぎは賢明ではない」と表明し、景気の過熱を防ぐために時機を逃がさず利上げを進める考えを示した。従来通り、議長はトランプ政権の財政政策などがFRBの経済見通しに影響するとの見方も示した。
この点において、議長は昨年12月のFOMCの声明の通り、経済成長率が想定よりも上振れる可能性を留意しつつ、景気動向に合わせて年数回の利上げが妥当と考えている。
他のFRB関係者からは利上げに加え、景気回復に沿ってFRBのバランスシートの正常化を進めるべきとの考えも示されている。地区連銀の総裁らは、トランプ政権の政策運営に不確実性があることを認めつつも、景気そのものは利上げに耐えられると考えている。
そのため、今後は各会合でバランスシートの正常化を含めた金融政策の正常化が議論され、追加的な利上げが行われる可能性はあると考えた方がよいだろう。