「自衛隊員死傷なら辞任」安倍首相の覚悟に、疑いを持ってしまう理由

海外派遣と「政治の責任」の歴史を辿る
半田 滋 プロフィール

成功するか、全滅するか

みてきた通り、「自己責任で必要なことを必要なだけ実施する」のが陸上自衛隊なのである。機能不全に陥ったシビリアン・コントロールなど、あってなきが如し、なのだ。

とはいえ、違法すれすれの活動に不安を覚えた陸上自衛隊は安全保障関連法案に「駆け付け警護」を入れるよう求め、法案は成立した。ようやく法律が現実に追いついたのである。

では、南スーダンPKOで「駆け付け警護」を求められた場合、自衛隊はどう行動するのか。陸上自衛隊の佐官はこういう。

「成功するか、全滅するか、二つにひとつしかない。一人や二人隊員に犠牲が出たからといって任務を途中で放り投げるわけにはいかない。だから何人犠牲者を出しても任務を成功させるか、失敗して部隊が全滅するかのどちらかしかない。『駆け付け警護』を要請された隊長は悩みに悩むでしょうね」

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安倍政権は昨年11月、南スーダンPKOに派遣される青森県の部隊を主力とする第11次隊に「駆け付け警護」の任務を与えた。しかし、付与=実施ではない。陸上自衛隊の内部資料には「(駆け付け警護は)対応可能な範囲で実施」「実施するか否かは個別具体的な状況により判断」とあり、隊長の判断を重要視している。ただ、最終的には首相がその決断をするのは言うまでもない。

 

防衛省は7日、「廃棄した」としていた南スーダン派遣部隊の日報「日々報告」が「見つかった」として公開した。昨年7月、首都ジュバで大規模な戦闘が起きた当時の分である。日報には「戦闘が生起」「流れ弾への巻き込まれ」「市内での突発的な戦闘への巻き込まれに注意が必要」と危険な状況が生々しく書かれ、国会で戦闘との表現を避けて「衝突」と言い換え、事態を矮小化した安倍首相や稲田朋美防衛相の答弁との落差が際立つ。

そもそも自衛隊のいるジュバとその周辺の情勢は「不安定な状態が続いている」とする国連の報告書と「比較的落ち着いている」とする日本政府の評価は180度違う。

「積極的平和主義」を掲げ、自衛隊を活用したい安倍首相にとって南スーダンPKOは、ソマリア沖海賊対処と並ぶ、自衛隊海外活動の二枚看板のうちのひとつである。活動を継続させたいがために、クロをシロと言い換えているのではないのか。そんな疑念が浮かぶのだ。

安倍首相に求められるのは、死傷者が出たら辞任する覚悟を持つこと以前に、「政権の都合」という色メガネを外して情勢を的確に分析し、必要とあらば大胆に撤収を命じる覚悟ではないだろうか。