退職金をもらってから資産運用を始めるのでは「遅すぎる理由」

寿命100年時代のマネーシフト①
加谷 珪一 プロフィール

AIで投資はより安全に、そして簡単に

定常的な運用ということになると、多くの人が頭を悩ませるのが、投資先の選別やポートフォリオの管理である。幸いなことに、これからの時代は、従来では考えられなかったペースでテクノロジーが進歩する可能性が高く、その影響は資産運用の分野にも波及してくる。具体的にはAI(人工知能)を使った自律的な資産運用である。

ここ数年、AIに関する技術が急速に進歩してきたことで資産運用の世界が激変している。海外の大手ヘッジファンドにおいては、トレーディングにAIを活用することはもはや当たり前の光景である。

プロの世界においてAIの導入が進めば、当然、一般投資家向けのサービスにもAIの技術が導入されてくる。最近ではスマホをベースに、ごく簡単な質問に答えるだけで最適なポートフォリオを構築し、実際にそのポートフォリオにしたがって運用を行ってくれるサービスも登場している。

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例えば独立系のウェルスナビ(WealthNavi)は、ポートフォリオの構築や実際の運用をロボットにお任せできるサービスである。年齢、年収、資産額、投資目的など簡単な質問に答えるだけで自動的にポートフォリオが決定され、あとは資金を振り込むだけで、上場投資信託(ETF)を中心に自動的に資産運用が行われる。

ポートフォリオの見直し(リバランス)も自動化されているので、一旦、資金を振り込んでしまえば、後は完全にほったらかし投資が可能だ。マネックスや楽天証券など既存の証券会社も同様のサービスを提供している。

これらのサービスはAIというほどのものではなく、古典的なポートフォリオ理論にしたがって、売買を自動化するサービスといった方が適切である。だが将来的には、もう少し複雑でリスクを取った運用についてもAIがサポートするようになることは間違いない。

 

では、金融分野において広範囲にAIが普及した場合、個人の資産運用はどう変わるのだろうか。AIを使った投資は金融理論に従って淡々と売買を繰り返すことになるが、これは、多くの人が陥りがちな、相場急変時のパニック的な動きとは無縁の世界である。おそらくそれだけでも投資成績はかなり向上するだろう。

もちろん多くのサービスがAI投資になれば、各社の運用成績は平均的な市場のリターンに近づいていくので、誰かが大きく儲けるということは難しくなるかもしれない。

株式市場の醍醐味を知る人からすると、少しつまらない世界かもしれないが、逆にこれは多くの人にとって朗報である。生涯労働・生涯運用の時代において、こうした着実な運用方法が生まれつつあることは喜ばしいことではないだろうか。

(マネーシフト第2回「毎年百万円を投資に回せば、30年後に億万長者になれるかもしれない」こちら