聞かずに死んだら、もったいない!最高におもしろい落語家はこの人

なぎら健壱×堀井憲一郎が選んだ
週刊現代 プロフィール

堀井 本人によれば、「古典の名人」と呼ばれるよりは、広くいろんなジャンルをやりたいとか。あと、ややマイナーなところで個人的に好きなのは、むかし家今松師匠。

なぎら 今松さんの噺は聞いたことない。面白いんですか?

堀井 全然(笑)。でも、好きなんです。「弟子入りしたい」と思ったのはあのひとぐらい。内容がどうこうというよりも、今松師匠が作り出している空間が気持ちいい。なんともいいにくいけど、そういう噺家です。

なぎら ウーン、よくわかんねえなァ(笑)。でも、落語って結局聞く人それぞれの趣味がすべてだから、それでいいんだよね。アタシがおすすめしたいのは、ベテランだと柳家権太楼。あと中堅で言えば春風亭昇太はやっぱり面白いと思う。上手いという意味ではなくて、ドタバタの滑稽さがある。それから、林家たい平もいい。古典と新作と両方できるしね。一度、たい平の「幾代餅」で不覚にも泣いちゃいました。

同じネタでも常に面白い木久扇

堀井 立川流の志の輔さん、談春さん、志らくさんは相変わらず引っ張りだこですが、この三人は実力も申し分ない。

なぎら 三人とも頭一つ抜けてますね。それから談笑もいい。

堀井 彼らは落語の新しい形を作ろうとしている感じがします。志の輔師匠は、噺で腑に落ちないところは古典でも我流でアレンジしていて、噺に妙な説得力があるんです。談春さんもそう。彼の「文七元結」を聞くと、「女郎屋の女将はなぜ博打好きの長兵衛に金を貸したのか」っていう、原作にはない部分が膨らんでいて、聞いていて納得できる。

なぎら 昔、「こりゃあ、たまげたのが出てきたなァ」と末恐ろしく感じたのは、(春風亭)小朝だったんだけど。

堀井 '80年代的な、明るくポップな要素を落語に取り入れて、一躍人気者になりましたよね。

なぎら そう。「小朝が枯れてきたら怖いぞ」と思ってたら、結局、あのままで一皮剥けず(笑)。見終わってから残るものがないんだよなあ。そろそろギアチェンジしてもいいとアタシは思うけど……。

堀井 いまでも奇抜な着物を着て変わった新作落語をやって、これがドカンドカンと受けている。個人的には、古典落語でもういちど私たちを唸らせてくれる可能性ももった人だと思ってます。

なぎら 意外な感じがするけど、あの談志師匠がとても高く評価していたのが林家木久扇と三遊亭圓歌。滑稽では、この二人に並ぶ人はいないと思います。

堀井 木久扇師匠は相変わらず馬鹿ばかりやってるけど、めっちゃくちゃ笑えます。同じネタを何回聞いてもきっちり笑わせてくれる。あの芸の力もすごい。

なぎら ただ、木久扇も圓歌も残り時間がそう長くないだろうから、早めに生で見ておくに越したことはないな(笑)。

週刊現代』2017年2月18日号より