松方弘樹の「遺言」~病に倒れる直前に、彼はすべてを語っていた。

適わないと思うやつも、抱きたい女も
週刊現代 プロフィール

いつも未来を見ていた

そうした茶目っ気を発揮する一方、松方は著書の末部では、映画界への「遺言」も残している。

〈俳優にしてみれば、大手プロダクションに入っていさえすれば役が安定的に回ってくるんです。一年か二年待っていれば、順番にやってくるわけですから。でもね、それでは力はつかんですよ。俳優は待ってちゃ駄目、人を押しのけてやる商売ですから〉

 

映画界の明日を模索し続けていた松方。著書を通じて多くの人に呼び掛けたかったのかもしれない。松方の代表作を描いた『映画の奈落 北陸代理戦争事件』の著者でもある伊藤彰彦氏は語る。

「松方さんは『時代劇最後のスター』や『実録やくざ映画最後のスター』といわれますが、私は最後のスターでありながら、未来に足をかけた役者だと思います。

Vシネマなどの低予算の現場にも行って、若い人間と一緒に弁当を食い、劣悪な環境の中での立ち回りもやってのけた。大スターならやらないようなことをやって、若手に力を与えてきたんです。

病床で一番おっしゃっていたことは『もう一回、芝居やりてえなあ』。〝映画〟でも〝役者〟でもなく、〝芝居〟。そんなところが、松方さんの本質だった気がします。

本を出すことについて松方さんは『やめとけ!』『おれの本では売れない』と(笑)。覚悟はしていたのですが、訃報は無念でなりません。本を手元に届けて、その重さを確かめてほしかったですね。

この本を通じてこれからも松方さんと触れられる機会があり、これから映画を作る方に松方さんの意志が継がれることを願っています」

「週刊現代」2017年2月11日号より