銀行・生保・商社・自動車…これから始まる一流企業「大合併」

人口減少社会で生き残るために
週刊現代 プロフィール

見てきたように、国内の過当競争を闘っているばかりではじり貧になるのは目に見えているので、世界に活路を見出そうとする企業も多い。

しかし、世界に出ればそれで「安泰」ではなく、むしろこれまで相手にしたことのないような巨大企業がライバルになってくる。こうした相手に伍するための再編劇も、ここから続出してくる。

生損保業界は、まさにその「好例」。大手生保幹部が言う。

「生損保ともに人口減少・高齢化する国内だけでは稼いでいけないので海外に打って出る必要がありますが、世界には総収入が15兆円規模の仏AXAグループや、独アリアンツグループなどの『ガリバー』が君臨している。

しかも、彼らは生保も損保もやる総合保険会社。こうした中、業界内では『次の国内の巨大再編は生損保の枠を超えた業界再編になる』と言われ始めています」

第一生命とかんぽ生命も

中でも有力視されているのが、日本生命と東京海上HDの統合だ。大手損保OBも言う。

「東京海上HDは中期経営計画で生保事業を『成長分野』と明記するなど積極的ですし、かたや日本生命は海外事業に出遅れているので、海外M&Aに積極的な東京海上が魅力に映る。この2社は販売チャネルも異なり、日本生命は生保レディ6万人による販売、東京海上は代理店による販売が主流。

一緒になれば、生保・損保のセット販売ができるうえに、営業網もバッティングしないので、シナジー効果はかなり大きい」

 

両社の統合が実現すれば、その総収入規模は10兆円超に迫り、世界のトップ5に肩を並べる。そんな日本生命-東京海上連合に対抗するために、第一生命HDとかんぽ生命が合併して、同じく「10兆円グループ」の仲間入りをするという話も浮上している。

「第一生命からすれば、郵便局での窓販チャネルを使えるのが絶好の商機になるし、かんぽ生命からすれば第一生命の商品開発ノウハウなどを吸収したい。

さらに、保険会社というのは巨額マネーを運用する『ファンド』の側面も持っており、この両社が一緒になれば、より積極的な投資案件にベット(賭け)することができるようになる。実は昨年、かんぽ生命と第一生命は業務提携することで基本合意もしている」(前出・幹部)

ここで次の表をご覧いただきたい。これは各業界で大企業同士が手を結んだ場合、世界でどれだけの地位になれるかを示したものだ。

たとえば、石油元売り業界ではJXHDと東燃ゼネラル石油の統合は決まっているが、さらにここに出光興産、昭和シェル石油を合わせても世界5位。メガファーマが君臨する製薬業界でも武田薬品工業、第一三共など業界トップが統合してやっと世界2位で、そこまでしないと世界では勝ち残れないということがよくわかる。

航空業界では、JALとANAHDという長年のライバルが手を結ぶと世界4位になるが、その再編話は現実的になりつつある。航空業界の内情に詳しい嘉悦大学教授の小野展克氏が言う。

「目下、国際線競争が激しさを増していて、各国で大胆な統合再編が巻き起こっています。国際線を飛ばす自国の航空会社を一社に絞って生き残りを図ったり、仏エールフランスと蘭KLMが統合するなど、国境を越えた統合まで起きている。

さらに、アジアや中東では国が主導する形で、最新鋭の空港を整備したうえで自国航空会社のプレゼンスを高めていく戦略が取られ、大韓航空やシンガポール航空、エミレーツ航空が伸びている。

片や日本では人口1億人あまりなのに国際線2社体制を維持しており、国際競争で出遅れている。このままいけば経営体力を消耗するだけなので、これを挽回するにはJALとANAの統合という一手に出る必要に迫られてくる」

アメリカの航空業界もかつて大手6社体制だったのが、各社の経営破綻などを経て3社に集約された。日本でもJALが経営破綻したのは記憶に新しいが、このときは国土交通省が救済策に乗り出した経緯がある。

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「国交省には『競合2社体制を維持することで、自分たちの航空行政の存在感を維持できる』という思惑があり、これが再編を妨げている一因になってきました。

しかし、もはやそんな悠長なことは言っていられず、昨年からは国交省がJAL、ANAに対して、採算の悪化している傘下の地域航空会社の統合を検討するように指示を出した。この先に、国際線部門の統合が出てきてもなんらおかしくない。

採算性の高い国内線は競合を維持しながら、国際線では新たなナショナルフラッグ『JANA』が生まれる日も遠くないかもしれません」(前出・小野氏)